小話いろいろパラレルへん | ナノ
いつになく楽しそうな雰囲気で帰宅したルカは、家電量販店の袋を手に提げていた。
「ふふ。暑くなってきましたし、少し奮発して買ってしまいました」
興味深そうに袋を見つめるアルムにそう告げながら、ルカは品物を取り出す。
出てきたものは―――
「かき氷機…」
「はいっ!最近のものは自宅でも美味しいものが作れるそうですよ」
「へえ…すごいね」
「ご飯を食べたら一緒に作って食べましょう。楽しみですね」
楽しみすぎて僕が甘いの苦手なの忘れているな、とアルムは思った。でも、満面の笑みを向けて言われてしまったら、こくりと頷くしかできなかった。
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ルカがシロップを取りに行く間、氷を削るのはアルムの役目になった。
削ると言ってもかき氷機は電動式のもの。スイッチを入れるだけだ。奮発したと言うだけはある。
アルムが氷を入れて稼働させると、小気味よい音を立て、用意した器に削られた氷がたまっていった。
崩れて落ちてしまわないよう、器を傾けバランスよく作っていく。
ちょうどふたつできあがったところで、沢山のシロップを抱えたルカがパタパタとやって来た。
アルムの作ったかき氷を見て、お上手ですと目を細めた後、それらを差し出して。
「イチゴにメロンにレモン!他にも揃え、ま、…あっ!」
ここでようやく、ルカはアルムの好みを思い出したらしい。
「すみません…」
シロップを差し出した時の表情はどこへやら。罪悪感からか、ルカは俯いてしまった。
「僕の事は気にしないで。早く食べないと溶けちゃうよ?」
いつもルカにされるように、よしよしと頭を撫でてやる。それから「どれをかけるの」とシロップを目の前に並べて促せば、ルカはゆっくりと顔を上げてシロップを手に取り、氷にかけ始めた。
それをスプーンで掬い、申し訳なさそうにアルムの方を見ながら、ゆっくりと口に運んで。
「どう?美味しい?」
ルカが喉を上下させたので、アルムはそう尋ねてみる。
「はいっ!ふわふわでとても美味しいです!」
ルカはすっかりいつもの調子に戻り、幸せそうにかき氷を頬張っている。
相当お気に召したのか、アルムの作ったふたつの氷はあっという間に無くなってしまった。
「お代わりする?氷もあるし、作ってあげるよ」
「いえ、もう結構です。あまり食べると、体も冷えてしまいますし」
言った傍からルカがふるりと体を震わせたのを、アルムは見逃さなかった。
彼の両肩に手を置いて、ちゅっと唇を重ねる。
「あったまった?」
悪戯っぽく笑って聞いてみれば、ルカは頬を染めて頷いた。
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