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「ねえロビン聞いてよ」
「嫌だよ」

休み時間。
クラスメイトに話を聞いてもらおうとアルムが声を掛けたのだけれど、即突っぱねられてしまった。
まだ何も言っていないのにひどいじゃないかとロビンに言うと、彼は渋い顔をしながら答える。

「アルムが聞いてくれって言ってくる時は大体惚気話なんだよ。ちなみにグレイもな。お前ら二人して口を開けばルカ、ルカ、ルカ。クレア、クレア、クレアって。聞いてるこっちがうんざりだ。いっその事二人で惚気てろよ」

聞かされる側としてはたまったものではないので、切実にそうして欲しいと思って提案したのだが、今度はアルムが首を横に振った。

「グレイに何を話しても俺のクレアの方が可愛いって言って聞かないんだ。確かにクレアも素敵な人だと思うんだけど、ルカだって魅力的なんだよ。あの聖母みたいな微笑みに、柔らかい物腰…止まる事を知らない大人の色香。それに僕の全部を受け入れてくれる器の大きさも…」
「あーあー分かった分かった。それはもういいから話を聞かせてくれ」

こんな長ったるい事を聞かされるなら話を聞いてやった方が早く済むと思ったので、ロビンは大人しく話を聞いてやることにする。
そんなロビンの気を知る由もなくアルムは嬉々として話し始めた。

「ついにルカが携帯電話を替えたんだ。初スマホ。僕とお揃い!」

これはやはり惚気話になりそうだ。ロビンは抗議をするかのようにあからさまに嫌な顔をしてやったのだが、アルムは構わず続けている。
ボタンとフラップから離れたくない、機能が多すぎて使いこなせない、パソコンで事足りる等、フィーチャーフォン愛用者にありがちな拒否をしてくるのを何とか説き伏せて変更に漕ぎつけたらしい。

そんな所も可愛いだの好きなんだだの所々で余計な言葉はあったが、かいつまんで言うとこんな感じだろう。何となくでも聞いてやっているあたり、自分も人が良すぎるなあとロビンは心の中で思っていた。

次に聞こえてきた単語はボタンやフリック入力。今度は文字入力について語り出したらしい。
恐らく、ボタンと同じように入力をしていたからフリック入力を教えたとかそんな所だと解釈する。
核心に触れるのはいつになる事やら。

「ガイドが出て来るの待って入力してるから、一文字打つのにもちょっと時間かかってて。そういうの見てると可愛いし、何より自分もそうだったなーって思ったりしない?」
「あー、そうだな」

何か聞かれたことは分かったので、無難な返事をしておく。それはアルムの希望通りの答えだったらしく、目を爛々とさせて言葉を紡ぎ始めた。

「だよね!?なのにフルキーボードで入力できるの知ってからは完全にそっちに行っちゃってさ。ルカ、パソコンには強いから早いのなんのって。慣れればフリックのほうが早いって言ってるのに全然聞く耳持たないんだ」
「早いならいいじゃねえか。困る事でもあんのか?」
「別に困らないけどさ、ルカのたどたどしい所なんてそうそう見れないから勿体ないじゃないか。だから、練習しなよって言って僕に何か送る時だけは切り替えてもらってる。ルカってメールでも丁寧だからさ、一言だけの入力でも何分後に返ってくるんだ。一生懸命入力してると思うと可愛すぎてどうにかなってしまいそう!」

アルムの勢いは衰えるどころか加速している。この調子なら休み時間終了のチャイムが鳴るまで終わらないに違いない。
俺もアルムの惚気のせいでどうにかなってしまいそう。
ぎりぎりで出かかったが、ロビンは何とか堪えた。


  

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