「柳生、どうするんじゃ?」
次の日、当たり前のように私のところへ来た仁王くん。
どうする…とは?
思っただけなのに察したように口を開いた。
「市ノ瀬の事ぜよ。」
「───…あぁ。」
「その様子からして…」
「昨日無理だと言いましたからね。諦めたでしょう。」
眼鏡をクイッと上げた。
仁王くんはというと困ったような、何とも言えないような微妙な表情をしていた。
「仁王…くん?」
「いや、俺の思い過ごしならええんじゃが…。」
「?」
「市ノ瀬が最後に『覚悟しとけ』って言っとったのが、どうも気になるんじゃ。」
確かに、言っていた気がする。
少し頭に血が上っていたので、あまりはっきりとは覚えていないが。
『覚悟しとけ』と言うことはまた、何かをしてくると言うことなのでしょうか…。
「まぁ、俺としてはそっちのが面白そうじゃからええけど。」
「に、仁王くん!!」
彼は背を向けて手をヒラリと振って去ってしまった。
「(…………。)」
やはり考えてしまうのは市ノ瀬さんの事。
すこし、言いすぎてしまっ………いや、あのくらい言わなければわかってもらえないに決まっている。
「…柳生。」
呼ばれて振り返る。
そこには見慣れない黒髪ロングの女子生徒。
「…貴女は?私に何か?」
「私を淑女にしてくれ。」
「……は?」
『淑女にしてくれ』というフレーズは流行っているのでしょうか?
そう思わずにはいられない。
一体何が目的なのだろう、この生徒は。
「失礼ですが、お名前は…?」
「失礼だな、もう忘れたのか。市ノ瀬律花だ。」
「そうで────……え?」
頭がショートする。
確かに、話し方は昨日のあの人だ。
けれど…、髪の色だけでこんなにも印象が変わるものなのか…。
「えぇぇぇえ!!市ノ瀬さん?!」
「なんだ。」
「髪が…黒…」
「お前が注意したんだろ?!だからこうして黒髪にしてきた。」
毛先をワサワサと触りながら、唇を尖らせていた。
「な……」
まさか、彼女がこんなことをするなんて……。
まったくの予想外だ。
「意外、だったんだろ?」
ニヤ、と口角を吊り上げる彼女に言葉が出てこない。
「で?協力、してくれるのか?」
「……分かりました。本気のようですし。」
そういうと、パチパチと拍手が聞こえてきた。
「おめでとう、柳生、市ノ瀬。ようやく了承を得たんだね。」
「ゆ、幸村くん?!」
「幸村!」
幸村くんが扉にもたれかかりながら、手を叩いている。
…少し、嫌な予感がする。
「面白いものがやるらしいんだ。」
「────?!」
目の前に突き出されたチラシには大きく『ミス立海!!』と書かれていた。
「市ノ瀬には、これを受けてもらう!!」
「はぁぁあ?!」
それは宿命と名付けられた
(冗談…だよな…?!)
(ううん、本気☆)
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ミス立海^^*