── 1日目 ──
「まずは、ミス立海について説明させてもらうよ。」
部室にてテニス部のR陣が机を囲んでいる。
そこに静かに幸村の声が響いた。
「うちの学校の伝統行事でもある“ミス立海”の審査の基準は今も変わらずに心、技、体各10点満点」
幸村は続けて詳しく説明をしてくれた。
心は内面、技は特技、体は外見……
ということらしい。
幸村が話し終わると、静かに手が上がった。
「はい、柳生。」
「あの、根本的なことをお聞きしても?」
「なんだい?」
「何故…、部活のミーティング中にこの議題なのですか…?」
口元が若干引き攣っている柳生。
確かに。
今はテニス部のミーティング中。
そこに私が呼ばれるのは不自然だ。
「何故って、我が立海大テニス部が市ノ瀬を推薦するからだ。」
「す、推薦…?!」
「あぁ、ミス立海というのは10人以上の推薦があって初めて参加が認められるんだよ。」
「だからといって部活の時間を裂かなくとも…」
「時間がない。ミス立海は1週間後だからね。」
幸村の笑顔を見ながら顔を反らす柳生
。
わかるよ、怖いからな、幸村は。
こんなときだけ柳生に共感する。
「まずは…何をしようか?」
顎に手を添え、考えるそぶりをする幸村。
仁王は机に乗り出して聞いてきた。
「そうやのぅ…趣味は?」
「しゅ、しゅみ……?」
「そう、市ノ瀬の趣味。何?」
「ない」
「は…?」
「趣味はない」
答えると皆の顔がポカンとする。
ポカンとしてないのは柳くらいだ。
「趣味がない…とは…?では休日は何をしているのですか?」
眼鏡をくいっと上げてから言う柳生。
「あぁ、休みの日はアイツ等が悪さしないように見張って……」
「アイツ等?」
しまった。
この辺の不良どもをまとめてるなんて、言っちゃイカンだろ。
「いや!なんでもない!!休日は何もしてない!」
「……?」
「じゃあ、まずマトモな趣味を見つけることから始めようか。」
「趣味を……見つける?」
そういうと、幸村は街の方を指差した。
「今日は、野外ミーティングだ」
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