それは暗く───……
何も見えない闇の中………
ふと前に現れたのは昶。
現れたかと思えば悲しそうな顔をしていた。
そして闇へと消えていく──。
賢吾も、綾も、白銀も……悲しそうに、何も言わずに消えていく。
気付くと目の前には洸がいた。
泣きそうな顔で…笑っている。
私は怖くなって手を伸ばした……──でも、遅かった。
そこにはすでに洸の姿はなかったんだ……─



「…凪冴?凪冴?!」
「…ん……洸…?」



私はうなされていたんだろうか…?
洸が心配そうに駆け寄ってくるのが分かった。
私は頭を押さえながら、身体を起こす。
洸は、静かに頭を撫でてくれた。



「どうした?うなされてたけど…大丈夫か…?」
「……。…うん、何でもない…」



『何でもない』と私が心配をかけまいと言った一言で、洸の表情が一変した。
心配そうな顔から、真面目な顔付きに。
『凪冴』と優しく呼ぶと同時に頭をかかえるように、そっと抱き締めてくれた。



「俺の前で、無理しなくていいよ。」



そのとき、張り詰めていた糸がプツンと切れた気がした。
感情を抑えられなくて、溢れ出す。



「……怖いよ…みんな、みんな…私の前から……消えて……」



気付くと、涙が頬を伝っていた。
それを見た洸は私を強く抱き締めた。
私も、ギュッと抱き返した。
洸が何処かへ行ってしまうという不安を打ち消すように。



「…大丈夫だよ。俺はここにいるから。ずっと、側に…。」
「……ッ…」



その言葉にホッとして、さっきよりも大粒の涙が頬を伝う。
それから、声を出して泣いた───……



****************



どれだけの時間がたっただろう。
凪冴は泣き疲れて眠ってしまっていた。
俺は凪冴の手を握り、彼女の額にキスを落とすと、静かに目を閉じた。



俺は…凪冴だけを愛しているから──




「…離れたりしないよ」



呟いた声は、静かに部屋に響いた。





愛しているから
(ずっと一緒だ…)




 




 
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