「凪冴さん〜ほら、帰りましょう?」



私の横には小走り……というか、浮いている白髪の男がいる。
さっきから、帰るようにと私に声をかけているのだ。
それに、撒こうと走っても、絶対に付いてくるのでさらに鬱陶しい。



「……ついて来ないで。」
「ほらほら〜昶くん達が心配してますよ〜?」



私が何を言っても、へらへらして言葉をかえす。
外国人の様に両手を広げる白銀に、キッと冷たい視線を送る。
だが、そんな視線ももろともせずニコニコしているヤツに余計腹が立つ。
誰のせいでこんなに怒ってると思ってんだ!



「白銀は先に帰ってよ。」



足を止め、白銀と向き合う。
蒼い瞳を睨み付け、そう言った…が。



「なぜ…そんなに怒っているんです?」



意外な言葉が飛んできた。
『嫌です♪』
とニコニコ顔(♪付き)で返されるとばかり思っていた。
それが、真顔で…『なぜ?』だって。
そんなの、決まってるじゃない。


それは…、それは……



「原因はだれですか?昶くんですか?」



白銀はいつだって───……



「では、賢吾くん?」



私じゃなくて………

「…もしかして…ワタシですか…?」



昶ばっかり…かまって……──


…って───アレ?
数秒、私の動きが止まった。
別に白銀の言葉に反応したわけではない。
というか、何も聞いていなかったのだから言葉に反応するはずがない。
私は辿り着いた私の気持ちに唖然としたのだ。
黙り込む彼に視線を送る。



「ワタシが原因で怒っているんでしょう?」



少し困った顔で言われた。
…白銀が原因っちゃ、白銀なんだけど…
何て言うか…その……
と、自分の気持ちに気付いてしまった私は、いい伝え方が分からず口ごもっている。
私の行動から何かを察し、白銀は苦笑いをした。



「…正直な人ですね。」



そう言ったっきり、黙ってしまった。
さっきの勢いはどこへやら。
私も何と言って声をかければいいのか分からず、黙っていた。



「ワタシは先に帰ります。すみません、余計な事をしてしまって。」



悲しそうに白銀が踵を返した。
…変な誤解されたまま、帰っちゃう…
何とか引き留めて、誤解を解きたい。



「白銀!!!」
「わぁっっ!!??」



咄嗟にグッと握ったのは白い……
─…白い…縄─?
その白い縄らしきものの元を辿っていく。
そこには後ろ髪を引かれた白銀がいた。
……縄じゃ……ないんだ。
引かれた白銀は、驚きを隠せずに私を見ている。



「凪冴さん?!何してるんですか?」
「いや、これは──その……し、白いなって。」



私は彼の髪を見ながら、ボソッと言った。
それが聞こえていたのか、白銀はクスクスと笑いはじめてしまっていた。



「わ、笑い事じゃなくて!」
「笑い事ですよ。『白いな』って何ですか…(笑)」
「だって…」



だって──…何が何でも引き留めたかったんだもん。
頬を軽く膨らましていると、白銀が静かに切り出す。



「もう、怒ってないんですか?」
「…あぁ…いや、まぁ。」



曖昧な返事だったが、白銀はいつもの笑顔に戻った。
一呼吸おいて、彼がその場にしゃがみこんだ。
それに合わせるように私も隣にしゃがんだ。
なぜしゃがむ?と思いながらも、あえてツッコまなかった。



「凪冴さん、ワタシは…貴女といる時間が大好きです。笑ったり、悩んだりして少しずつ貴女を知って行けるような気がして。大好きなんです。凪冴さんも、貴女といる時間も。」
「…へ……?」



ん?最後、何か混ざってなかったか?
時間の話だったよね?
……もしかして…白銀は……私のこと──?



「えぇ!?…嘘?!」
「嘘じゃないですよ!」



そう言いながら、彼はニッコリ笑う。
その微笑みが綺麗すぎて、目を反らす。



「凪冴さんは?」
「…………////」



覗き込んできた彼の顔を数秒見つめ、私は彼の唇を塞いだ。






恋の味を教えよう
(今度はワタシからしますね♪)
(いやっ、遠慮します。)




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お題@確かに恋だった

 



 
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