「こんにちはー!マスター、居るー?」
「あぁ、凪冴さん。」



最近、Agingに通うのは習慣となっている。
それほど毎回足を運ぶのは、一つだけ。
マスターに会いに来るためだ。



「今日も…。」
「コーヒー、だよね?」
「!!お願いしまーす!」
「ふふ、はいはい。」



頻繁に訪れているせいか、マスターにはもう分かっていた。
私はいつものように、準備をしているマスターを眺めながら日常の出来事を話す。



「はい。砂糖多め…だったよね?どうぞ。」
「ありがとう。」



私のコーヒーの好みも覚えてくれている。
そんな小さな事で私の心はいっぱいになる。
そうして、毎回確信させられる。
貴方への気持ちを…。
コクコクと飲むと、口の中に苦みが広がる。
砂糖をたくさん入れたって、コーヒー特有の苦みは消えない。
コーヒーを飲みながらマスターと話す時間は、私にとってとても大切な時間。



「あぁ、もうこんな時間か。そろそろ店を開けようかな。」
「そっか、じゃあ私は帰るね。それと、コーヒー代はツケでよろしく♪」



そういって、鞄を担ぐとマスターの呆れ笑いのようなため息が聞こえた。



「またかい?」



ふふ、と笑うマスターはいつもより素敵に見えた。
こんな彼の笑顔が見たいだけ。
それだけのために、苦手なコーヒーを飲みに来る。


そうして、毎回ツケにして帰るのだ。



「うん。また今度ね。」



そう言って、私は彼と会う口実を作っていく。



いつか、この口実を使って、貴方に会えるように、
そして………いつか………





苦い、苦い、恋の味
(貴方に好きだと言えるように)





 




 
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