「マスター!」



そういって、入ってくる聞き慣れた足音。
店の扉には準備中という札をかけていたはずだけど。
僕はだんだん大きくなる足音に自然と顔が綻んだ。



「やぁ、凪冴さん。今日は学校じゃないのかい?」
「あぁ、学校は…昼から行く。…今日は…どうしてもマスターに会いたかったの…。」



僕が黙り込むと『ぷ』と吹き出し、笑い出す彼女。



「びっくりした?どうしよう、とか思った?!残念、今日は午前授業でしたっ!」
「…ふふ、そんなことだろうと思った。でも、こんな店に出入りしてるの見られたらどうするの?」



僕はグラスを拭きながら聞いた。
高校生がお酒を出すお店なんかに出入りしてたら、誰もが不審に思うだろう。
彼女は『う〜ん』と悩んで嬉しそうに言った。



「あ、妹っていう!名案じゃん!」
「あはは、いいんじゃない?」



そういうと、“マスター!コーヒー頂戴!”という元気な声が聞こえた。



「やっぱり僕は、嫌かな。」
「……ん?何が?」
「凪冴さんが妹って話。」



そういうと彼女は頬を膨らまして“そーですか!すいませんね!こんながさつなのが妹に立候補して!!”と誰がどう見ても怒っている。
言い方を間違えたかな、ともう一度言ってみる。



「そんなに怒らないで。」
「怒ってません!!」
「…僕が言ったのは、君が本当の妹だったら嫌だってこと。よく考えて、他の人とはできて妹とはできない事って何?」
「え?………?」



“うーん”と唸りながら考えている。
人一倍負けず嫌いな彼女には、すぐに答えは教えない。
しばらくしたら、向こうから聞いてくるだろう。



「…マスター…、何が言いたいの?」
「ふふ、」



思わず笑ってしまった。
素直に恥ずかしそうな声を出す彼女は可愛い。



気付くのか楽しみだ。



そのうち、僕の気持ちも見抜かれてしまうだろう。



そんな先の事を考え、もう一度クスッと笑った。





もうずっときみに恋してる
(妹じゃ恋愛ができないからね)






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@確かに恋だった



 
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