「さーなだー?」

「なんだ。」




呼びながら部室に入ると真田がドアのすぐ近くに立っていた。
近付こうと足を踏み出すが、まさかそこにテニスボールが転がっているとは予想もつかなかった。




「どわぁあっ!!」

「───っ!」




ガッターーン…───




「いてて…」

「………」




目を開けると、目の前には真田の顔。
はたから見ると、私が真田を押し倒したように見える体勢だ。




「真田、」




倒れる直前に彼が支えてくれたのだろうか。
でも倒れたってことは……、重くてごめんね。




「……朱鷺原…」

「………っ…////」

「重i……」

「重いとか言うなよ。」

「…………」




一瞬でも真剣な声色にドキッとした私が馬鹿だった。
そんな男は馬に蹴られてしまえ!
私は彼を見つめながら頬を膨らました。

すると真田は顔を背ける。
帽子が邪魔でイマイチ表情がわからない。



「どいてくれ」

「ねぇ、帽子、取ってみてくれる?」

「まず、どいてくれ」

「帽子取ってくれたらどくから」

「……」




嫌々ながらも、黙ってその黒い帽子を取ってくれた。
あれ、少し顔が赤く──




「さな、だ……」

「なっ何だ!早くどいてくれ」




片手で口元を隠しているが、赤くなった顔は隠し切れていない。
帽子の後が付いている髪は少し汗ばんでいる。
ヤダ、ナンカ、エロイ。




「真田、それわざとやってる?」

「何をだ?」

「天然?」

「何の話だ」

「襲うよ?」

「俺はそんなやわな鍛え方はしてない」




こいつ……
意味が分かってない、というか取り違えてる。
これだから"うぶ"は…。




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