3年に上がって、クラスが変わった。
初めは気にもならなかった彼女を、いつの間にか目で追っていた。
そのことに気付いたのは、つい最近。
「なぁ、仁王。昨日のテレビで──」
「おぉ。」
休み時間、丸井が話しかけてきた。
適当に相槌をうち、ちら、と彼女に目をやった。
「(…また、一人)」
誰かと一緒にいるのが苦手なのか、友達がいないのか。
移動教室も弁当も常に一人だ。
今回は日直らしく、黒板を消していた。
「───で、そんとき親父が──」
「あ」
もう全く丸井の話を聞いていなかった。
黒板を消していた彼女は、一生懸命背伸びをしている。
どうやら黒板の上の方に届かなくて、消せないらしい。
「仁王?」
静かに立って、黒板に向かった。
黒板消しを持っている彼女の手に自分の手を重ねると、肩をビクッとさせて驚いていた。
「いつも一人で頑張っとるけど、困ったときくらい、誰かに頼りんしゃい。」
俺は、彼女から黒板消しを抜き取ると、残ったところを全て消した。
「お前さんは一人じゃなかよ。」
そういうと彼女は今にも消えそうな声で、
『ありがとう』
と言った。
初めて君の声を聞いた
(もっと知りたくなった)
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名前変換なくて申し訳ない…。
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