『好きだ』なんて、簡単に言えるわけないし、簡単に使うものではないのだ。




『ごめん、弦一郎。』






『あたしに付き合わせちゃって。』







『ありがと、…バイバイ』




目に涙を浮かべて去っていく彼女に…、伝えたら変わったのだろうか。
『お前が好きだ』と言ったら、離れずにすんだのだろうか。
帽子を深く下げ、




『そうか』




としか言えなかった自分に腹がたった。





***********





朱鷺原と付き合いはじめたのは丁度半年前だった。




「あたし、弦一郎が好き。」




幼なじみだった俺達は、彼女の一言で境界線を越えた。
俺も同じ気持ちだった。
だから、彼女も同じ気持ちだなんて嬉しかったんだ。





「弦一郎、部活、頑張って!」

「あぁ、ありがとう。」





それから部活続きで帰りも、休日もろくに構ってもやれなかった。
それでも、変わらないアイツの笑顔に甘えていたんだ。





「弦一郎…、あの…!」

「すまない、部活があるんだ。」

「…そっか…。分かった。頑張ってね!」





俺は気付かなかった。
朱鷺原にどれほど寂しい思いをさせていたのか。







**************
別れを告げられてから、数日が経った。
避けられているようで中々見かけない。
ついに、廊下でばったり再会した。





「あ……おはよ、真田。」

「………!!」





あいさつだけしてすれ違った。
彼女は少し小走りになっている。
俺は思わず振り返り、





「朱鷺原っ…!」





名前を呼んだ。
彼女は足を止め、ゆっくりと振り返った。





「……」

「その…あ……」





言葉が上手く出てこない。
想いを言葉にすることは、とても難しく、勇気のいることだ。
彼女はそれをはっきりと伝えてくれた。
次は、俺が……伝えなければ。





「好きだ。俺は、朱鷺原が好──っ」





トンッと小さな衝撃を受ける。
それは彼女が抱き着いたからだった。





「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ…!!弦一郎の馬鹿ぁ……!」





ぎゅう、より強く抱きしめられ、しかも泣いている相手にどうしたらよいのかと、あたふたする。
肩が上下に揺れ、ひっく、ひっくとこれでもかというくらい泣いていた。





「若菜、」

「好き、好き!私の方が、もっと大好きなんだからぁ……。」





そういって泣きわめく彼女を俺は強く抱きしめた。








すき、スキ、好き、
(言葉にして、初めてキミに伝わった)







**************
アンケリク第1段!!!!!
切甘でしたっ!
私はギャグしか書かないので、こういうリクエストは書いてて楽しかったです!
ありがとうございました^p^




 


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