『好きだ』なんて、簡単に言えるわけないし、簡単に使うものではないのだ。
『ごめん、弦一郎。』
『あたしに付き合わせちゃって。』
『ありがと、…バイバイ』
目に涙を浮かべて去っていく彼女に…、伝えたら変わったのだろうか。
『お前が好きだ』と言ったら、離れずにすんだのだろうか。
帽子を深く下げ、
『そうか』
としか言えなかった自分に腹がたった。
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朱鷺原と付き合いはじめたのは丁度半年前だった。
「あたし、弦一郎が好き。」
幼なじみだった俺達は、彼女の一言で境界線を越えた。
俺も同じ気持ちだった。
だから、彼女も同じ気持ちだなんて嬉しかったんだ。
「弦一郎、部活、頑張って!」
「あぁ、ありがとう。」
それから部活続きで帰りも、休日もろくに構ってもやれなかった。
それでも、変わらないアイツの笑顔に甘えていたんだ。
「弦一郎…、あの…!」
「すまない、部活があるんだ。」
「…そっか…。分かった。頑張ってね!」
俺は気付かなかった。
朱鷺原にどれほど寂しい思いをさせていたのか。
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別れを告げられてから、数日が経った。
避けられているようで中々見かけない。
ついに、廊下でばったり再会した。
「あ……おはよ、真田。」
「………!!」
あいさつだけしてすれ違った。
彼女は少し小走りになっている。
俺は思わず振り返り、
「朱鷺原っ…!」
名前を呼んだ。
彼女は足を止め、ゆっくりと振り返った。
「……」
「その…あ……」
言葉が上手く出てこない。
想いを言葉にすることは、とても難しく、勇気のいることだ。
彼女はそれをはっきりと伝えてくれた。
次は、俺が……伝えなければ。
「好きだ。俺は、朱鷺原が好──っ」
トンッと小さな衝撃を受ける。
それは彼女が抱き着いたからだった。
「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ…!!弦一郎の馬鹿ぁ……!」
ぎゅう、より強く抱きしめられ、しかも泣いている相手にどうしたらよいのかと、あたふたする。
肩が上下に揺れ、ひっく、ひっくとこれでもかというくらい泣いていた。
「若菜、」
「好き、好き!私の方が、もっと大好きなんだからぁ……。」
そういって泣きわめく彼女を俺は強く抱きしめた。
すき、スキ、好き、
(言葉にして、初めてキミに伝わった)
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アンケリク第1段!!!!!
切甘でしたっ!
私はギャグしか書かないので、こういうリクエストは書いてて楽しかったです!
ありがとうございました^p^
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