(企画/鈴音様リク)
最近、どうしても気に入らないことが一つだけある。
「おはよー、雅治ー。」
「おぉ、おはよーさん。」
仁王と並んで歩く女子生徒。
詳しく言うと、"仁王と並んで歩く俺の彼女"と言うところか。
要するにこれが気に入らない原因だ。
若菜と仁王は仲が良くて、家も近い。
嫉妬するには十分だ、………が。
"幼馴染み"と言うことだけで、話は変わる。
幼馴染みなら仲が良くても何も不思議はないし、家が近いのは典型的な幼馴染みじゃないか。
そんなことは分かっている。
近くにいる仁王ではなく、中学で知り合った俺を選んでくれたのは若菜だ。
何も不満はないし、むしろ嬉しかった。
だから……なのかもしれない…。
「あ、蓮二!!おはよっ!」
「…ぁ…あぁ、おはよう。」
「どうしたの、蓮二?」
覗き込む彼女を見る。
あぁ、もう、俺は…どうしたら…。
このまま誰も知らない土地へさらってしまえたらいいのに。
そんなことを考えさせる自分の嫉妬心に呆れる。
「おー、参謀、おはようさん。」
「おはよう。」
別に仁王が嫌いなわけではない。
ただ、……若菜の楽しそうな顔を見ていると、気に入らないのだ。
これは仁王に限ったことではない。
だから、"嫉妬"しているのだと理解したのだが。
「〜っていうのはどうじゃ?」
「あ、いいねー!ね、蓮二!……蓮…二?」
何かの提案をしていたのだろう。
声をかけられるまで気付かなかった。
「あぁ、すまない。少し考え事をな。」
「蓮二が考え事かぁ…何だろうー…って、雅治は?」
いつの間にかいなくなった仁王を探す。
目につくのは銀髪と赤髪の二人組。
「丸井と一緒のようだな。」
「え?そっかー…」
「お前も行ってきたらどうだ。」
そんなに仁王といるのが楽しいなら、行けばいい。
無理して一緒にいたところで何も楽しくはないのだから。
「……え?」
半ば信じられないと言うような目で俺を見た。
黙ったまま、足を止めた彼女の前を歩いていく。
後ろから、タッタッという足音が聞こえる。
「待って蓮二!…何?どうしたの?怒って…るの?」
「……仁王といるのが楽しいならそちらへ行けばいいだろう。」
「え…ちが、雅治は……!」
少し、あしらうように言った言葉は自分でも"俺らしくない"と思った。
走り出した気持ちはどうも押さえられない。
お前が名前で呼んでいることさえ、俺は──。
「雅治は、ただの幼馴染みで、えっと、私は好きでもなくて、向こうも私の事はなんとも…、と、とにかく…その……」
上手く言葉にならないのか、必死に言葉を探っていた。
伝えたい言葉が見つかったのか、今にも泣きそうな顔をして、俺を真っすぐ見た。
「私は、蓮二が…蓮二だけが……好きなの……!」
震える声で放たれた言葉……。
俺は馬鹿だと心底思った。
同時に、子供…だと感じた。
頭より心が先に動く。
彼女が好きだ、誰よりも。
そう思い、どうしたら自分のものになるのか…、そんなことばかり考えていた。
彼女は俺が思っていたよりもずっと、"想って"くれていたのに。
若菜が言った事により、なんだか吹っ切れた気がした。
「分かった。すまない、ただの嫉妬だ。気にするな。」
「うん…って、え!嫉妬!?」
「気付かなかったのか?」
さっきの不安そうな顔はどこへやら。
既にふふ、と笑みを浮かべている。
つられて笑うと、クスリと笑った。
そして、
若菜が遠慮がちに伸ばしてきた手を、
俺は、迷わず握った。
手をつないだ。
(きみに一歩近づけた気がした。)
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鈴音様、企画参加ありがとうございます!
嫉妬夢、ということで書かせていただきました。
柳好き?の方がたくさんいて嬉しいですww笑
説明文?が長くてすみません;;
では、当サイトをこれからもよろしくお願いいたします。
お題@確かに恋だった
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