「あ…失敗…」
鏡には、ハサミを持った私…と…切りすぎた前髪が写っている。
『失敗した』と言うのは…お分かりだろう…前髪を切りすぎたのである…
ショックだ…
今日は席替えして、初めての一日なのに…
やっと、あの人の…隣になれたのに…
そう考えながらでも、学校に向かってしまう自分の足が憎い。
道を歩いていると、自分を見られているような気がして、思わず鞄を両手で抱え、肩をすくめる。
席に座ると同時に顔を伏せる。
ゴンッとおでこをぶつけたが、気にしない。
しばらくそうしていると、たくさんの人が教室に入ってくる…
気付くと、隣の席の椅子を引く音がする…
「(仁王くんだ…ッ)」
彼は、何故か私の肩を叩いた。
「どうした?…気分…悪いんか…?」
仁王くんが…声かけてくれてる…
や…やば…
「あ…だ、大丈夫だよ!!うん!元気!」
私は、前髪を手で押さえつけて仁王くんに顔を見せた。
「…そうか。ならよか。………。」
見てる……めっちゃ前髪見てるッ!!
いっそ、開き直ってしまおうか……
悩んでいると、仁王くんがスッと腕を伸ばしてきた。
「!?」
おでこに押さえつけていた手が、静かに下ろされる。
彼は私を見て…
クス…っと微笑んで、前を向いた。
少しの間、目を奪われてしまった…
「…その前髪。」
「え?」
仁王くんが、呟く。
「…可愛いナリ…」
彼の顔は、心なしかほのかに赤かった。
静かに鼓動が高鳴っていくだけで……
隣に君が居れば。
(…これからよろしく…ね///)
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前髪切りすぎること、ありませんか。
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