(キリリク/切甘)
「おはよう、真田くん!!」
「あぁ、朱鷺原。おはよう。」
「今日も部活?」
そう聞くと、『あぁ』とだけいったので『朝から大変だね』と返した。
真田くんはテニス部の副部長さんだ。
今は私の彼氏でもあるのだけれど。
私たちが一緒に居られるのは朝学校へ行く10分〜20分の間だけだ。
「俺は部室へ行く。ではな。」
「あ、うん。…頑張ってね。」
そう言って軽く手を振った。
本当はもっと話して居たかった。
…だけど、そんなワガママなんて…。
「…はぁ。」
ため息がもれる。
教室についた私は窓際である、自分の席から外を眺める。
丁度そこはテニスコートが見える絶好のポジションで、勿論好きな人もバッチリである。
「…真田くん…かっこいいなぁ…。」
ぼそっと呟く。
…もっと、話したい。
もっと、知りたい…彼の事を。
部室から1人の女の子が出てきた。
マネージャーなのだろう…。
…真田くんと話している姿を見ると、胸のあたりがモヤモヤして、何とも言えない気分になる。
真田くんは…気付いていないのかもしれないけど…
私はワガママなんだ。
一緒に教室まで行きたいし、お昼も一緒に食べたい。
放課後も一緒に帰りたいし、休みの日だって二人で何処かへ出掛けたいの。
……私以外の女の子と楽しそうに話さないで…。
そんなの、ワガママだ。
真田くんは朝、部活あるし、お昼も幸村くん達と部活の事とか話してるし、帰りは部活で遅くなるからと言って一緒には帰ってくれない…。
土日だって、テニスの練習と試合で会うこともままならない。
色んな事を考えていると、あっという間に一日が終わっていた。
外はもうオレンジに染まっていて。
ぼーっとしていた時間がどれだけ長いか、思いしらされた。
「真田くんは…私の事、好きなのかなぁ…。」
付き合ってると言っても、私ばかりが好きな気がする。
「…朱鷺原…?」
「え…?」
聞きなれた声に振り向くと、真田くんが立っていた。
もしかして…今の独り言…聞こえてた…?!
「…朱鷺原、今のは…」
「あ、いや、それはただの独り言で──別に深い意味は…」
言葉を遮られた。
…腕を引き寄せられ、私はいつの間にか彼の腕にすっぽりと収まってしまう。
「…よかった。俺はお前の事を、もっと知りたい。何が好きで、何が嫌いなのか。どんな感情を抱いているのか、何がしたい…とか。もっと、知りたいんだ…お前の口から…。」
「さな、だ、くん…。」
同じことを思っていたんだ。
嬉しくて、涙が頬に伝う。
「…私も、真田くんの事、もっと知りたいよ…。」
真田くんは少しだけ抱き締める力を強めて、『これからは、出来るだけ時間を作る』と言って…
「まだ言ってなかったな…。若菜…好きだ。」
そう、耳元で囁かれた。
彼の腕が優しいことは、
私しか知らない真実である
(まずは、お昼一緒に食べよう?)
**********
キリリクの真田夢です。
***追記***(02/07)
名前と苗字が逆でした。
申し訳ありませんm(_ _)m
お題提供@Chien11様
←Novel Top