『仁王くん!これ受け取って!』

『メリークリスマス、仁王くん!』

『仁王先輩、これ!』





とある男の周りには、女、女、女ども。
私も女どもに入るのだが、目的が違う。
イコール、『仁王』目当てではないのだ。





「何してるの、あんた達!」

「仁王先輩にクリスマスプレゼントあげに来たに決まってるじゃないですか。若菜先輩こそ、何しに来たんですか?」

「仁王にプレゼントぉ?…笑えない冗談ね。」

「…?」





私と後輩の女子生徒の会話に周りの女どもも黙っている。





「まだ分からないの?コイツの顔、よく見なさい。」





そう言って、彼の着崩した制服のネクタイを引っ張った。





「…何ですか。若菜先輩は何がいいたいんです?!」





その言葉と同時に、『意味分からないこと言うな』という視線が私に刺さる。





「ほんと、笑えないわ。」





私は彼の銀髪を鷲掴みにし、下に思いっきり下げた。
…すると…





「や、柳生先輩?!」

「柳生くん?!」

「そう!!この男は仁王雅治の格好をした、柳生比呂士!因みに私の彼氏!!」





私の言葉+目の前の男に唖然とする女子達。
柳生が『すみません。仁王君ならきっと、屋上に居ますよ。』と言うと今までいた女子の大群は屋上へ向かっていった。
二人きりになって、私はジッと彼を見る。





「何で入れ替わったの。」

「え、いや、…それは…」

「今日が何の日か知ってるよね?」

「クリスマス…」

「そう、クリスマス。知ってたのに入れ替わったの?それは恋人の私に対するいじめ?」

「いえ、そんな!!私は仁王君に無理矢理…」





焦りながら誤解を解こうとする彼。
何となく分かっていた。
どうせ、『こう言う日に入れ替わって成功させんと、テニスの本番でボロがでるぜよ。』とかって言いくるめられたんだろう。
変なとこで素直なんだから。





「……はぁ。そんなことだろうと思った。比呂士が自分から入れ替わるなんてするわけないし。」

「…朱鷺原さん…。」





あ!と思い出した。
比呂士にプレゼント用意したんだった!
ごそごそとプレゼントを鞄から出す。





「比呂士、プレゼント。」

「ありがとうございます。」

「開けて!」





綺麗にラッピングを取り、箱を開ける。
そこには半透明のガラス瓶。





「これは…香水、ですか?」

「うん、男の人でも付けやすいのにしてみたんだけど…」





シュッと自分の手にかけ、彼の顔の前に差し出す。





「…おや、良い香りですね。」

「よかった!…この香りの言葉ってさ…、独占欲なんだって!私にピッタリ♪」





『さっき比呂士が女の子に囲まれてたとき、すっごい嫌だったんだからね!!』とニッコリ笑うと、比呂士も微笑んだ。
そして箱をよく見る。
メーカーと名前を読み、こちらに顔を向けた。





「では今度、貴女にもこれと同じ香水を差し上げます。」

「…え?」

「私も独占欲は強い方ですから。」





そう言って彼は私の右手にキスをした。





まるでどこかの王子様みたいに。






Happy X'mas
(王子様と香水と…)





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柳生編




 



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