今日で、この学校ともお別れだ。
大好きな、あの人とも別れることになる…。
…私は…県外の高校に行くのだ。立海じゃない。
卒業式が終わり、フラリと立ち寄った校舎裏。そこには、一本の桜の木があった。
綺麗だな、と感じながら見とれていた。





「…何してるんだい?」





そう聞こえたのは、愛しい人の声。
振り返るとそこには…よく知った部長がいた。





「え…?…ゆ…幸村くん…?」





彼はニッコリと笑って、私の隣に立った。
幸村くんは、立海テニス部の部長さんだ。
それに、女の私でも驚くほど綺麗な顔立ち。
私がテニス部のマネージャーをやっていたのも、幸村くんがいたからで…。





「君とは、これでお別れだね。マネージャーとして、よく立海を支えてくれた。ありがとう。感謝するよ。」





目線を桜から外さずに、優しい声で言う彼の横顔を見て、少し顔が赤くなる。
こんな風に話す事もなくなるんだ…。
そう思うと自然と喉が熱くなった。





「ううん。楽しかったよ、幸村くん達に会えて。」

「うん、…俺も。」





そういって、微笑を浮かべた。
桜と、とても合っていて見とれてしまう。





「桜…好きなんだ?」

「あ、うん。綺麗だから…」

「そうだね。」





クスリと彼は笑った。
これが幸村くんと見れる桜は最初で最後。
この3年間、彼の役にたててよかった。
そう、本気で思えるようになっていた。





「来年も、再来年も…朱鷺原と桜が見たいな。」





そういって、彼の手が私の頬に触れる。
その手は暖かくて、まるで彼の心みたいだった。





幸村くんはまた、にっこり微笑み…




そのまま、少しかがんだ──…









君と桜をもう一度。
(唇が重なる五秒前)







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五秒前シリーズ



 



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