『告白する。』
そういったのは、2日前。
なのに、いつの間にか色んなところで噂になっている。
前から好きだった。
あの人に笑いかけて貰えるのは、私にとって一番の幸せだった…あの時から。
『若菜もクラス一緒だったよな。ヨロシク。』
初めて会った時を思い出す。
氷帝学園に入って、クラスに馴染めなかったとき…明るく声をかけてくれた。
長い髪を後ろで一つに縛って、微笑を浮かべていた宍戸。
その時から宍戸は私の特別になったし、私は宍戸だけを見続けていた。
その時から…宍戸はテニスしか見えていなかったのだけれど。
「宍戸。」
昔とは違い、髪も短く身長も伸びている彼に声をかけた。
いつも以上に緊張する……。
彼は多分、私の言いたい事を知っている。
そう思うと、余計動悸が激しくなった。
「……どうした?」
「私、宍戸のこと…───…。」
無意識のうちに、スカートを握りしめていた。
答えは分かりきっていたんだ。
でも、言わないと…言われないと引きずって行くようで嫌だったから。
「…──ごめん────…。」
彼が言う、その三文字は私の心に大きく穴を開けた。
彼に別れを告げ、教室を出る。
気付けば、時計の針は6時を回っていた。
窓の外には大粒の雨が休むことなく降り続いている。
学校を出ようとしたが、雨が降っている。
濡れるけど、いいや。
そう思い、一歩踏み出す。
我慢していた感情が少しずつ、溢れてくる。
「…先輩。」
「!?……長…太郎…?」
『先輩』と呼ばれたと同時に、傘を傾けられた。
"後輩"は背が高く、見上げなければいけなかった。
自分でも、泣いていた事を隠そうとするが…上手く行かない。
「あ、…えっと…これはね……ッ!?」
「………いい。」
「…え?」
「…何も言わなくていい。言わないで下さい。俺は…知っていますから。」
いきなり、抱き締められた。
『泣いてください』
と囁かれると同時に涙が溢れてくる。
安心できて、ホッとした。
体全体の力が抜け、全てを長太郎に預けた。
全部…分かっているのか…
私が好きな人も。
私が流す涙が…彼の為なのだということも。
「…」
顔を上げると、長太郎の頬に涙が流れていた…。
泣かないで…私の為なんかに…
長太郎は何でこんな私に優しくするの?優しくされたら…甘えちゃうじゃない…
優しく…しないで……
──…長太郎…──。
優しい涙が…心を洗い流してくれる気がして。
優しい涙。
(君は優しすぎるから─…。)
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久々な悲恋。
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