『告白するんだって。』
耳にしたのは、いつだっただろうか。
あまり記憶にないその噂は、どこに居ても聞こえてくる。
俺は前から知っていた。
あの人が見ているのはいつも、俺じゃなかったから。
『君、入部希望者?』
初めて会った時を思い出す。
長い髪を二つ縛りにして、ニッコリ笑っていた先輩。
その時から先輩は俺の特別になったし、俺は先輩しか見ることはなかった。
その前から…先輩は違う人を見続けていたのだけれど。
俺と会う…前から。
「…鳳。」
同じ部活でもあり、同級生の日吉が珍しく話しかけてきた。
少し壁にもたれながら聞く。
内容はだいたい想像がつく。
「…先輩のこと。…何もしなくていいのか。」
「日吉もその話か。いいんだよ、別に。」
軽くクスっと少し無理に笑った。
よくない。
よくないけど…何も出来ないんだ、俺は。
『じゃあ』と日吉に告げながら早歩きで学校を出て家に帰った。。
「……バカじゃないのか。」
***************
気付けば、時計の針は6時を回っていた。
窓の外には大粒の雨が休むことなく降り続いている。
─…何も出来ないんだ、俺は…─
俺は無意識で傘をさし、家を出た。
俺は、何がしたいんだろう。
こんな時間…誰もいないはずなのに…
ある予感が胸を過る……───……。
たどり着いた先は、学校で。
視線を上げると、門のところでずぶ濡れになっている、女子生徒が一人。
いつもの二つ縛りもなくて、長い髪の毛は顔や首に巻き付いている。
「…先輩。」
「!?……長…太郎…?」
『先輩』と呼ぶと同時に、傘を傾けた。
少し高めの声が俺の名前をゆっくり呼ぶ。
先輩が顔を上げると、目が赤くなっているのが明らかに分かった。
「あ、…えっと…これはね……ッ!?」
「………いい。」
「…え?」
「…何も言わなくていい。言わないで下さい。俺は…知っていますから。」
全部…分かっている。
先輩が好きなのはあの人で。
先輩の流す哀しい涙が…あの人の為なのだということも。
この二年間、先輩だけを見てきたのだから…。
「…」
いつの間にか、自分の目から涙が頬を伝っていた。
もし、あの人より先に俺が会っていたら。
俺を愛してくれましたか?
その涙は俺の為に流してくれていましたか…?
──…先輩…──。
哀しい涙が…心に溜まっていく気がして。
哀しい涙。
(俺じゃ…ダメですか。)
********
後輩書きたかっただけ。
←Novel Top