「ね、ね、朱鷺原ちゃん!」
またか…と思い、顔を声のする方へ向ける。
「…千石…」
「明日、暇?デートしない?」
千石清純。
山吹中のテニス部員。
と、いう私はそのテニス部のマネージャーやっています。
だけど、毎回毎回誘ってくるこの男に嫌気が指している。
中身はイイヤツなんだろうけど。
「ね、行こうよー!」
「ヤダ。他の子誘って行けばいいじゃん。」
いつものように、笑顔で誘う千石。
それに対し、私はいつものように返答する。
いつもなら、残念な顔をして去っていくのだが…──…いつもなら…──。
「ダメなんだよ!!朱鷺原ちゃんじゃないと!!」
いつもの千石には見られない焦りがあった。
焦ってる…意味が分からない…?
別に焦るようなことじゃないし、いつもと同じ会話だと思うんだけど。
「どうして?」
聞いてみると、千石が返す言葉が見つからないのか、『その……なんていうか…』と口ごもっていた。
「……それは…どうしても…。」
「いつもそんなにしつこくないのに、今日はなんで。何かあった?」
いつもなら、直ぐに違う女の子捕まえてデートの約束してるのに。
今日はいつも以上にしつこい。
「…い、一回くらいは、朱鷺原ちゃんとデートしたいなーってね♪」
「じゃ、サヨナラ。」
なんだ。
いつもと同じじゃないか。
心配した私がバカでした。
デート、デートって、それしか頭にないのか…この男は。
呆れながら、千石に背を向けて歩き出す。
「ちょ、朱鷺原ちゃん!?OKだったら電話してね!まってるから!」
「…気が向いたらね。」
電話なんてしないと思うけど。
なーんで、あんなに必死なんだよ。
あーーー!!!分かんない!!
頭の中がごちゃごちゃしているときに、近くの生徒から『レポート』という単語が聞こえる。
悩んでいたことも忘れ、頭にはレポートの事でいっぱいだ。
急いで鞄から手帳を取り出す。
パラパラとめくって今月を開き、再来週の欄に『レポート提出』と赤い字で書かれているのを確認した。
ふと、明日の日付に目をやる。
「……あ。…明日って…」
『ダメなんだよ!朱鷺原ちゃんじゃないと!』
忘れていた。
『朱鷺原 誕生日』
「…言えばいいじゃん、キザ男め。」
私は手帳をパタンと閉じて、携帯を取り出す。
画面には、『千石清純』の文字。
忘れていたもの。
(あ、千石?…気が向いた。)
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途中千石本命だったww
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