「あ、ごめんね、待った?」




『いえ』と返す彼はいつもと雰囲気が違う。
いつも学校ではスーツだから。




「そんなに急いで走らなくても…。転んだりしたらどうするんですか。」
「だって…待たせてたし……。」
「こういう時は、男が待つのが普通ですからね。」
「…そうなの?」




ちらりと彼を見るといつもと同じように見えて違う。
私は友達にも内緒で先生と付き合っている。
私が風早先生と付き合ってる、なんて怖くて人には言えないのだ。
そのくらい私の彼氏の人気は凄い。




「そうだ、風早先生…、」
「先生はなしですよ。せっかくデートが台なしでしょう?深天?」




ニコッと笑う彼。
この人の笑顔は殺人級と思うのは私だけですか。




「…う、うん。か、風…早///。」
「よく出来ました。」




そう言って、歩き出した彼の背中を追った。
周りにはカップルばかり。
皆している…事…したいと思うのは変な事かな…。




「風早!」
「…?」
「……て…。」
「て?」
「手!」




バッと右手を前に出した。
すると彼ははは、と笑った。




「気付かないなんて、俺もだめだな…。」
「…きゃっ」




出した右手を捕まれ、強い力で引かれた。
勢い余って彼に抱き着く形になってしまった。




「やっぱり、可愛いですね、深天は。」
「な……///か、風早っ!///」




風早は私の顔を見るなり、クスと笑った。
そろそろ、ゆでだこになりそうという時にもう一度私の手を取った。




「急ぎましょうか。映画が始まってしまう。」
「…!///…うん!行こう!」




指を絡ませたそれは…、





所謂“恋人つなぎ”というものでした。









恋人つなぎ
(これってわがまま?)






 



 
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