「ねぇ、風早。」 「どうしたんですか、姫?」 「お願い、聞いてくれる?」 風早の袖を掴んでうつむく。 これから即位式が行われるから、服も着替えて準備ができるのを待っているのだ。 「…?ええ。」 私が『目を瞑って』と言うと、静かに金色の瞳を伏せた。 私が何をしようとしているのか、見当もつかない様子だ。 これからの即位式で、この国の王になる。 王になれば、自分の好きな人と一緒になることは難しい。 だから、王になる前に、好きな人に…。 ぐっと彼の首を下に引き、驚いた顔の頬に軽くキスをした。 「…っ…千尋っ?!」 「風早、ありがとう。これから、私は王として──…」 いまだに驚いている風早をそのままに、私は背を向けて二、三歩歩いた。 泣きそうだけど、泣いちゃだめだ…。 「王として、頑張るよ…。風早、ありがとう、大好きだったよ。」 そう言って駆け出そうとしたが、右腕をしっかり掴まれた。 だめ、振り向いたら……! グッと腕を引かれ、泣き顔を晒すことになった。 「千尋…!」 「…風…早……!」 それから重なる私達の影。 唇を重ねる毎に『離れたくない』という気持ちが大きくなっていく。 やっと離れた彼の唇から、言葉が発せられた。 「…出来ることなら、このままさらってしまいたいですね。」 「…えぇ?!///」 「はは、冗談ですよ。貴女が王になるのは長年見てきた俺の夢ですから。」 そう言って、私を抱き締めた。 耳元で聞こえる優しい声…。 この人が好きだ、愛している…。 「千尋、俺はずっと貴女を想っています。それだけは忘れないで。」 「…うん。わかった。」 それが“私”と“風早”の交わした最後の言葉。 本当の別れは、“王”と“従者”としての言葉しか交わせないのだから……。 (貴方を愛し続けていいですか) *********** 風早1stEDが切なすぎて大泣きした。 |