『柊のバカッ!!』




涙目で頬を叩かれた時にはどうしようかと思った。
私が何かしたんだろうか。
彼女を泣かせるほどの事を…?




「はぁ、分かりませんね…。」




ため息をついたところで、後ろから声がかかる。
振り向くと、鋭い雰囲気を纏った一人の同門が立っていた。




「忍人…ですね。何の用です?」
「国の軍をも動かしている軍師ともあろうお前が、一人の女に手も足もでないのか。」
「貴方には関係のない事ですよ。」
「…関係はなくはないな。深天は俺に泣きついてきた。」
「……っ?!」




『深天に何をした。』
そう問われるとかんに触る。
その言い方だけを聞くと、深天は忍人のもののようだ。




「(気に入らない、だなんて私らしくありませんかね。)」
「…何か言ったか?」
「いえ。…で、忍人。深天は今何処にいるんですか?」




聞くと『自室にいる』と答えた。
先ほど叩かれた頬に触れると、まだ少し熱く、ヒリヒリした。





さて、どうしたものか…。






手強い相手と腹の探り合いをしているような、気が抜けない相手というか。
とにかくそこには、楽しそうに微笑を溢す自分がいた。










どんなに優れた頭脳も、恋の前には無力である




 



 
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