「遅い…」 待ち合わせ時間から30分近くすぎている。 一人駅前で立っているのは予想以上につまらない。 せっかく慣れない浴衣を着てきたのに…。 周りはカップルばかりで居づらい…。 「はぁぁあ。」 「あ、藤宮さん!」 「え?」 呼ばれた方に顔を向けると、2組のカップルがこちらに歩いてきた。 見せ付ける用に彼氏と腕を組むクラスメイト。 「待ち合わせ?もう花火始まるのにまだ来てないの?」 「う…うん…」 「ありえなーい。マジ信じらんないしー!」 キャハハハと笑う相手に苛立つ。 ほっといてくれればいいじゃない…。 少し涙が溢れそうになったが、一生懸命堪える。 「それってすっぽかされたんじゃねぇの?」 「マジでー、それ最悪だしー!!」 私だけじゃなくて、彼の事も悪く言われたように聞こえて悔しくなった。 零れそうになる涙をこらえて、ギュッと浴衣を握った。 「違う……そんな人じゃない……。絶対…来るよ……」 「えー?でも今来てないじゃん、最悪な男───」 彼女が言ってる途中で…─── 「すみませんね、最悪な男で。」 「…か、風早先……生…?」 割ってきたのは私がずっと待っていた彼。 もう、口も聞いてやらないんだから…。 「遅れてすみません、深天…。」 「ちょっと待って、藤宮さんが待ってたのは…まさか…風早先生?!」 びっくりする4人を差し置いて、風早は私の機嫌を直そうと必死だ。 4人の中の一人の男が言葉を発した。 「教師だったら生徒に手ぇ出したらダメだろ。」 「…確かに…。」 個人的には風早が先生になる前からなんだからいいじゃない、と思うのだが、そうも行かないのだろう。 私は黙ったまま風早を見ていた。 「何です。親族と祭に来てはいけませんか。」 「親族…??」 「深天は俺のいとこです。この後親戚が集まるので迎えに来たんですが、それが何か?」 「……い、いえ…。し、親戚なら…仕方ないよね…?」 「第一、あなた達に俺のプライベートをとやかく言われる筋合いはありません。」 言葉と声色で切り放したのがよく分かった。 彼女達を引き離すように私の手を掴んで人混みに向かっていく風早。 「ちょ、風早っ!」「……この辺でいいですか。」 そういって、待ち合わせ場所からだいぶ離れた、人気のないところで手を離された。 「すみません、遅れてしまって…」 「……だった……」 「え?」 「いや……だった…」 え?ともう一度言った風早は申し訳なさそうに頭をかいた。 「え…あの……すみませ…」 「…風早が悪く言われて、……嫌、だったの………。」 「深天…」 そう言うと、先程の事を思い出して涙がボロボロと流れてきた。 化粧をしているので、目を擦る事も出来ずにただ、無数の涙は静かに落ちていく。 「深天はさっき、“そんな人じゃない。絶対来る”って行ってくれましたよね。俺はそれが凄く嬉しかったんです。」 「………!……かざはやのばかぁ…」 余計に涙が多く零れる。 ひっくひっくと肩を揺らして子供みたいに泣いた。 「ほら、せっかくのお祭りなのに、泣いてちゃ楽しめませんよ。」 その声が聞こえるとすぐに目元にキスをされた。 一気に顔が赤くなり、泣いてるどころじゃない。 「風早の馬鹿っ!/////」 「はは、それだけ元気なら大丈夫ですね。」 そういって、自然に手を繋いだ。 今日くらいはバカップルでもいいじゃない。 少し先に、金髪の王子様とお姫様がいて私は繋いでいない方の手で、大きく手を振った。 (あなたが愛しくてたまらない) オマケ→ |