「もう夕方か……。」
「…ごめんなさい、私に付き合わせてしまって…。」
「あ、いや、別にそういう意味で言ったんじゃないんだけど…」




一ノ姫を宮まで送っていく、このちょっとした時間に胸を弾ませていたはず。
でも…二人きりになると、上手く話せなくなる。




「…よかったら…で、いいのだけれど…。また、付き合ってくれないかしら?」
「了解、一ノ姫だけじゃ何すっかわかんねぇからなっ!」
「な…!は…羽張彦っ」




照れる姫を見て、可愛いと思った。
パッとすぐに目を反らしてしまう。
不思議に思ったのか、一ノ姫が俺の顔を覗き込んだ。




「羽張彦…?」
「うわっ!」
「どうしたの?」
「いや…別に…」




そういうと彼女はフフ、と笑った。
俺はとっさに………。




「綺麗だ…」




と、言ってしまった。
橙色の夕焼けに、黒く長い髪がなびいている。
そういうと、また彼女は笑った。




「そうね。本当に綺麗な夕日ね。」




勘違いしているのに、今までで一番いい笑顔を見せる姫に笑いが止まらない。




「な、何よ!羽張彦?!」
「な…何でもな…!!ぶ、くくく!!」
「もぅ!」




照れた顔も、さっきの笑顔も、今の怒った顔も…。
これからもずっと、見ていられるのだろうか。
…見ていられるように、護っていけるだろうか。

『ほら』と手を差し出すと姫は驚いてから笑った。
そして静かに俺の手をとる。




そうして俺はこの夕日に誓った。




この命に変えても姫を護り抜こうと…





…彼女を愛する一人の男として、護って行こうと。









秋の夕暮れは少し寒くて
(きみの手はこんなにも温かい)








お題@確かに恋だった



 



 
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