[act.1]


「おっはよー、蓮二!」

「おはよう。」




そういいながら私は彼の隣に並んだ。
最近、背の高い彼を見上げるのが癖になってしまったようだ。
頬の筋肉が一気に緩む。




「にやけるな、気持ちが悪い。」

「じゃあ、蓮二もにやけてよ。」

「"じゃあ"の意味が分からないな。」




いつも通りの会話。
他の人から見ると、『気持ち悪い』って言われた時点で恋人としてどうなの、と言われそうだが…。
不器用な蓮二くんの愛情表現だと私は思っているんだ。
(友達に同じ事言ったら『典型的なドMじゃん』と言われたが気にしないことにしよう。)




「そういえば。」

「んー?」

「名前呼び、慣れたんだな。」

「まぁねー!」




最初は酷かった。
"柳"と呼んでいた時はましだったが…。




『やな……蓮二!』

『嫌な蓮二?』

『ち、違うよ!』




何回誤解されたことか。
柳なんて紛らわしい名前付けるからだ。
(全国の柳さん、すみません)




「慣れちゃえば、"やなぎ"も"れんじ"も3文字だから、呼びやすいんだよね!」

「そういう問題じゃないだろう。」




はぁ、と呆れる蓮二は何十…いや何百と見てきた気がする。




「あぁ、そうだ。若菜、今日の部活は──」

「………。」

「…若菜。」

「…………………。」

「…………。」

「…い───…いだだだだた!!!!」




思いっきり、耳と頬を引っ張られた。
え、何、いきなり、何!!
目線だけで彼を見ると…眉間にしわが寄っていた。




「急に、どうし…たたたたた!痛い!」

「どうしていつも、お前は上の空なんだ。」

「べ、別に、う、ううう上の空なんかじゃ……!」

「……ふ、相変わらず嘘が下手だな。」




ふ、と私に笑いかけた蓮二に顔が火照る。
こんなふうに笑いかけられるなんて考えたこともなかったので、全く対処ができない。




「で、部活が何?」

「あぁ、お前は出なくていい。」

「うん──って、え?!」




なんだかノリツッコミみたいになってしまったが、これが素である。




「ちょっとした頼みがあるんだ。」




蓮二が私に頼み事?!
めったにないことで、思わず乗り出してしまった。




「なになに!私にできること?!」

「あぁ、もちろん。」




この時、蓮二がいつも以上ににこやかだったと気付くのは学校が終わってからだった。







「東京に行ってくれないか?」

「うん──って、え゛?!」







始まりはハッピーエンド
(この先が全く見えません。)
(相変わらず、ノリツッコミが好きだな)







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やっと続編です!
前作よりも蓮二はきっと優しい…はず。


2話から他校のキャラがたくさん登場します!



11/03/31  夜尋