[act.11]






「乾さぁぁあああん!!」




バタバタとコート脇を走り抜ける。
ノートと奇妙な汁を片手にこちらに気づく乾さん。




「朱鷺原さん、どうした?」

「いいこと、思い付きましたよ!合宿、夏、恋、といえば…………」




私がにやり、と笑うと静かに眼鏡を上げた。




------------------------------




「というわけでっ!青学、立海合同肝だめし、開催しますっ!!!」

「「は?」」




合宿所のロビーに皆を集めて、私の咳払いから始まったこの話に、皆はポカンと口を開けたままだった。
いきなり言われたら、誰でも驚くよね。


最初こそザワザワと不思議がってた部員達だが、流石は中学生、テンションが上がってきたみたいだ。




「楽しそーじゃん!」

「って言っときながら逃げんなよ赤也!」

「丸井先輩こそ!」




楽しそうでよかった。
合宿にきたのはテニスのためだけど、息抜きが合ってもいいよね。




「はーい、まずくじひいて、ペア作ってね!」




今回は、 ペアで祠前にある蝋燭の火を消し、次の蝋燭に火を付けて帰ってくる、というルールだそうだ。
流石は乾さん、アイデアが素敵。



皆がくじを引いた後、私の分のくじを開く。
部員達は、番号を叫んで次々とペアを組んでいる。
その中には、例の二人も含まれていた。




「かっかお……海堂くん……!」

「お、おぅ………」




よしよし、細工は成功だな!
ニヤリと笑うとブン太が寄ってきた。




「朱鷺原、誰とペアだったんだ?」

「私?あ、誰だろ……」




ブン太に言われてから気付く。
人のことばかりで、自分のことを忘れていた。
5と書いてある紙を頭の上に突き上げ、口に手を添え叫ぶ。




「5番の人ー!」




「いませんかー??5番ー!」




「あのぅ、5ばんー!」





「返事くらいしなさい!ごぉぉぉぉおおばぁぁぁああんん……「……俺だ」

「あんたね、私がどれだけ呼んだと思って……っ!?」

「すまない」




私の声に反応したのは……






「てっ手塚さん…………!!?」




彼は静かに眼鏡を上げた。






呼吸を忘れて君を見た
(ほんとに?!嬉しい!!)





**************
期間が開いてしまい、申し訳ないです^^;