[act.8]





「んーー!」




両腕を空に伸ばし、あくびをする。
狭いバスの中で爆睡していて、起こされ方がよくなかったせいか、開放感がはんぱない。
バキバキっと体中の骨がなった。




「年寄りか、お前さんは。」

「白髪ヤローに言われたくないね!」




嘲笑う仁王に言い返すと、またあくびがでた。
さっきまではオレンジだった空が、今は暗くいくつかの星が光り始めている。
近くにある別荘に目をやると、なかなか大きく、既に明かりが付いている。




「ほら、早く入って。」




幸村にそう言われて皆がいそいそと別荘に入っていった。




「これが部屋割。はい、解散。明日の練習に遅れないように。」




部長の言葉でバラバラとバラけていく。
青学の部員と仲良くしている姿も見られて、ホッとした。



レギュラーは2人一部屋だが、マネージャーの私は当然1人部屋だ。
あまり期待はしてなかったけど、綺麗で私好みな洋服の部屋だった。



明日も早い。
私は部屋付きのシャワールームで汗を流し、ベッドに入った………が。




「………寝れない。」




夕方バスで寝たせいか、全く寝付けない。
羊でも数えるか……




「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が──」




.

.

.




「羊が──12585匹、羊が12586匹、羊が……あれ、なんだっけ。……羊が1匹…」




逆に目が冴えて来てしまう。
数え直しは何回目だ?
10000匹越えると一気にわからなくなる。




「あーもー!やめやめ!!」




頭を横に振って体を起こす。
携帯を開くと軽く0時を過ぎていた。
あれ、数え始めたの10時くらいじゃなかった?
なぜだか、羊を数えるのがトラウマになりそうだった。


気分転換に窓を開けてみた。




「わー、気持ちー」




さすが山荘。
山に囲まれていて涼しい。
静かだし、星も見える。




「夜更かしとは、感心しないな。」

「Σ!!」




外から聞こえた声。
急いで左右を確認すると、左部屋の窓からだと言うことが分かった。




「蓮二だって夜更かしじゃん!」

「声が大きい」

「あ、すみません……」




声の主──蓮二は隣の部屋だったのか…。
ビックリした。




「まぁ、夕方あれだけ気持ち良さそうに寝ていたら、眠れないだろうな」

「起こしてよ」

「面倒な事は嫌いだ」

「ソーデスカ」




少しだけふて腐れながら遠くを眺めた。
木の合間からチラチラと光が見える。




「蛍?蓮二、あれ、蛍かな?」

「……そうだな」

「うわー、夏っぽい」

「夏だからな」

「返答が冷たい」

「……早く寝ろ。明日寝坊などしてみろ、コキ使ってやるからな」

「ひぃっ!分かった、寝る、寝ます!おやすみっ!」

「……おやすみ」





彼の口から聞こえる呆れた"おやすみ"が何だか無性に嬉しかった。






いつだって隣
(いつもと変わらない会話)





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好きな子と夜にお喋り、長年の夢((笑