[act.6]


この間の青学事件から数日。
どうやら蓮二には誤解は解けたようだ。
私は6限目にポケーっと外を見ながら"今日の部活は確かミーティングだったっけ…"と考えていた。


この時はのんき過ぎた。
まさか、あんな事になろうとは。



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「はぁぁあ……」




時は少し遡り昼食時。
屋上でつかれた大きなため息。
ついているのは、我らが部長幸村精市。




「む…幸村、どうした?具合でも悪いのか?」

「真田…、分からない?」




言われた真田は少し考えてから、首を傾げた。
どうやら分からないらしい。
また大きなため息をついた幸村は頬杖をついて真田に目をやった。




「つまらないんだよ。」

「…ん?つまらない?それはどういう…?」

「そのままの意味だよ。最近つまらないんだ。朱鷺原と蓮二は何かイチャイチャしてるし、前の方が面白かったんだけど。」




真田は少々引き攣ったように苦笑いした。
視線を外すと、部長はふふと笑みをこぼした。




「いいことを思い付いたよ。ふふ…そうだね。」

「……?」

「つまらないなら面白いことを作ればいいじゃないか。……ねぇ、真田。」

「……!」




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「というわけで!" 緊 急 合 宿 "を行おうと思う!」

「「はぁ?!」」




ミーティング中の幸村の突拍子のない言葉に皆が声を揃えた。
気まぐれにもほどがある。
それに緊急ってなんだ、緊急って!




「金曜日の夕方から日曜日の夕方まで2泊3日の合宿だ!」

「いやいや、"合宿だ!"って言われても!」

「何、朱鷺原。」

「いきなりすぎるよ!」




珍しく反論してみる。
私の言い分は間違ってないはずだ。
すると幸村は少しだけ口元を吊り上げた。




「あー、残念だなぁ。折角手塚の了承も得たのに…。」

「え…手塚って……まさか…!」

「青春学園テニス部部長の手塚だけど?……マネージャーがだめって言うなら仕方ない、断って──」

「よし、皆、合宿行こうか!!!」




ガッツポーズと共に笑顔を振り撒いた。
部員の中には喜んでいるやつもいれば、複雑な表情をしているやつもいる。
関係ないね!
私は手塚さんのテニスに惚れたんだよ、うん。
見たいんだよ、手塚さんのテニスが!




「──どう?蓮二は反対しないのかい?」

「…何故俺が反対する必要がある。」

「別に?……もしかして…」




クスクス、と部長が笑う。
そして柳だけに聞こえるようにボソリと言った。




「…手塚に取られちゃいそうで怖いのかな?と思って。」




"何が"と主語がなくても伝わったようで、柳は一瞬だけ眉間にしわを寄せた。
それはほんの一瞬で、気づかないほど少しだった。




「精市……そんなくだらないことを考えていたのか──」

「くだらなくなんてないよ。これは大切な────」





暇つぶしなんだから。





流れ始めたエンドロール
(平穏は終わりを告げた)






(…お前の暇つぶしに部費を使うな。)

(固いこと言うなよ、例のあの人と試合も出来るよ?)

(生憎俺は誰かさんと違って、単純じゃあないからな。)

(…チっ…)





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久々の更新!
書き直しすみません;;
いよいよ他校との合宿!