[act.5] 「やだなぁ!惚れませんよー!」 そういって右手をオバサンのように上下に振った。 『ふふ』と笑った不二さんは『僕は練習に戻るよ』と言って去ってしまった。 「そろそろ帰ろうかなぁ……」 ボソッと呟くと向こうの方から誰かが叫ぶ声が聞こえた。 「危ないっ!!!避けてっ──!!」 声の方を見ると黄色くて丸いモノが───テニスボールが私目掛けて飛んできた。 「………っ!」 あ、当たる……! 思わず目をギュッと閉じた。 ………あれ、? 衝撃がない? 恐る恐る目を開けると目の前には──! 「全く、物騒な学校だな。」 「れ…蓮二───?!」 目の前には、ラケットを構えた蓮二がいた。 どうやらテニスボールを打ち返してくれたようだ。 「どうして、蓮二が……───?」 「届けるだけでどれだけ時間がかかっているんだ。帰るぞ。」 もしかして、心配してくれた──? 今までにない行動に思わず口元が緩んだ。 当の蓮二は乾さんと話しているようだ。 「久しぶりだな、蓮二。」 「貞治。何をニヤけている。」 「HAHAHA☆ニヤけてなんていないさ、はは、ニヤけてなんか。」 やめて、それ以上蓮二を刺激しないで! 後が怖いんだからぁぁあ…! 心の歎きが聞こえたのか、蓮二がこちらを向いた。 「帰るぞ。」 「……わっ、ちょっ…待って…!」 と言っても待ってくれるわけもなく。 私は蓮二に引きずられながら、大声で叫ぶ事になった。 「乾さーん!不二さぁん!ありがとうございましたー!あ、あと菊丸くんも、手塚さぁぁあん!また見に来てもいいですかぁー?」 叫ぶと汗を拭いていた手塚さんが軽く頷いてくれた。 やった! 「ほう、彼氏の前で堂々と浮気とは。呆れて物も言えないな。」 「え?」 今、彼氏って…! 蓮二から彼氏って……!! 青学の門も段々小さくなっていく。 蓮二の顔を見ると、いつもの涼しげな顔とは違う、いかにも不機嫌そうな顔をしていた。 「蓮、二?……もしかして」 「………」 もしかして、いや、もしかしなくても… これは……!! 「嫉っt…」 「黙れ。」 な、なんてことだ…! 蓮二がヤキモチ? なにそれ可愛い!! 「…実はー、手塚さんってすごいかっこよくてさ、もう見とれちゃってー」 ほんの少しだけ、いつもの仕返しというか、意地悪をしてやろうと思っただけだったのに。 「……ほう、それは良かったな。青学に転校したらどうだ。」 そういって視線だけでこちらを見て、私の数歩先を歩いていく。 あれ、何だかヤバイ雰囲気。 「あのー蓮二くん?」 「なんですか、朱鷺原さん。」 完璧に怒ってらっしゃるー…。 「う、嘘だかんね!今のは全部嘘だから!」 「………」 「いや、マジで、青学なんか行きたくなんてないもんね!私は立海生なんだから!手塚さんはいい人だけど、好きとかじゃないから!!ねぇ、蓮二?!」 「誤解だってば、蓮二ぃぃぃい!!」 (…………ぷ) (え、何!今笑った?え?) ((こうも予測していた言動をされると、可笑しくてたまらない。)) ************* たまらん蓮二← 最近更新が遅くなってます。 すみまれんじ((黙 |