---柳side…---
「興味がなくなった。」
「……え…?」
──片腕を…押さえている朱鷺原を見た。
手に絆創膏が増えているのを見た。
いつからこんな事になったんだろう。
ずっと前から気付いていたのに。
俺は…。
『……私の事、好き?』
あの日、答えていたら今の状況が変わっただろうか。
なんと答えたらよかったのだろうか。
答えていたら…あいつへの嫌がらせも……終わったのだろうか……。
珍しく頭に疑問が駆け巡る。
俺のせいならば、方法は一つしかない。
自分で弾き出す答えに、後悔はしないはずだった───。
「…だから、お前には興味がなくなった。そう言ったんだ。」
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---仁王side---
「…だから、お前には興味がなくなった。そう言ったんだ。」
動きが、止まった。
いきなりの言葉に、俺は参謀と朱鷺原を交互に見るしかできなかった。
『…そう』とだけ言って、タオルを抱えて校舎に走っていく彼女を見送り、ちらっと参謀を見る。
「おー、おー、モテる男は辛いのぅ。」
「仁王…」
最初はからかい半分だった。
けれど、俺の名前を呼んだ声があまりにも哀しそうで、俺は思わず息を呑んだ。
「……これでええんか?」
そう聞くと柳は黙ったまま、近くのベンチに座った。
『お前には関係ないことだろう』と呟いた柳に全てを悟った気がした。
柳は、わざと…。
俺はその場のほぼ中心部にいた後輩マネージャーを横目で見た。
「はぁあ、お前さんらしくもないのぅ」
「…俺らしいと言うのは、どういうことだ」
「そりゃ、いつもみたいに朱鷺原を弄っとったり…そういう事じゃろ」
柳はまた黙り、フッと笑った。
きっと、少し前のやり取りでも思い出しているのだろう。
そんな幸せそうな顔を見て、俺は…。
あぁ、こいつ………朱鷺原の事が…。
なんだかんだ言いながら、結局こう言うことか。
「柳、」
「…何だ。」
「後悔、せんようにな。」
「……仁王……!」
俺は呆れたように笑い、柳生のいるコートに向かった。
柳、お前さんは…優しすぎるんじゃ。
やさしい嘘つき
(嘘、意外に下手やのぅ)
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まさかの仁王視点。
まさかの急展開。
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