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「野々宮……話があるんだ」
「…な、なんだよ」

 やけに神妙な顔で萩間が呟いた。普段はへらへらしてこんな顔なんてしないから、こちらまで緊張してしまう。

「…ひかないでよ」
「ひかないよ」
「友だち止めるとか、言うなよ」
「言わないって」
 ごくりと萩間が唾を飲む。釣られて、オレまでそれに習った。萩間は俯いて大きく息を吐いたあと、きっ、と、オレを観た。

「オレ、幽霊が好きになっちゃったみたいなんだ」





 2週間ほど前、萩間が半泣きでオレの家に来た。用件は泊めてください。ただそれだけ。他意なんてない。
 理由は、幽霊に殺されかけたから。初めはなんの冗談かと思ったが、萩間がすごく真剣に事細かに話すし、話がやけにリアルだった。萩間はそんなくだらない嘘つくやつじゃない。第一幽霊だのが苦手な萩間がこんな嘘でオレを驚かそうと思うほど根性はない。(言っとくが褒めことばだ)素直に信じて素直に泊めた。1週間後、萩間は自分の家に帰っていった。

 しかし、1つひっかかることがあった。なんで萩間は、こんな嬉しそうに幽霊の話をするんだろう。


「お前、殺されかけたんだよ?」
「うん」
「ちゃんと判ってる?」
「判ってる。…つもり」
 思わず呆然と萩間を見つめると萩間は涙目で、やっぱ変だよなごめんな、と言った。慌ててそんなことない、と言った。ただちょっと、びっくりしただけだ。

「友だちでいてくれる?」
「勿論。なんで友だち止める必要あんだよ」
「野々宮…!」
 とうとう萩間が泣き出した。オレはぽんぽんと、萩間の頭を撫でた。有難う。萩間が言った。


 オレの親友が幽霊に恋をした。なんてことはない。ただそれだけだ。

 要約すれば、今日も平和だ。そういうことだ。そういうことで、いいだろう。



……………

『いちに』よこ様より。
キリ番800を踏んで「萩さと」をリクエストして書いていただきました!

ありがとうございました!



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