Novel






「暇だよぉ〜」



「うっさいわね!ガキんちょ!!
今魔導器の修理してんだから邪魔すんじゃないわよっ!!」

魔導器の修理中のリタがカロルの頭を殴る、

もちろん本の角で。




「あだっ!!痛いよリタァ〜、本の角で殴らなくても良いじゃないか…」

「リタ、落ち着いて、カロルだって悪気があってやったわけじゃないんですから。」


「でも確かに暇よね。」

「ジュディスちゃぁ〜ん、暇ならぁ、おっさんに付き合わないぃ??」

「えぇ、もちろん。」

「えっ、マジで!?」

「どの槍がお好みかしら。」

「え、その"突き"合うですか、いや、そ、それはちょっと
おっさん遠慮すごめんなさぁぁぁぁい!!!

青年!!!見てないで助けて!!!」



「うるせぇな相変わらず何やってんだかおっさんは…。」

「ワフゥ…。」



生憎今日のダングレストの天候は雨で
流石のユーリも散歩に行くのも気が乗らず、宿屋で武器の手入れをしている。


その隣には呆れた目でレイヴンを見つめるピード。



「でも本当何もすることないな、闘技場も行けねぇし。」

「それは"行けない"じゃなくて、ユーリとジュディスが出禁くらって"参加出来なくなった"からでしょ…」

「バカっぽい、て言うかバカね、戦闘狂。」

「わりぃわりぃ、ハンセイシテマスヨ。」

「全然してない!!!」



そんな会話を繰り広げていた時、パティがこれ名案、とばかりに言った。

「それならば!!みなで部屋の中で遊ばんかの? 外も雨じゃし、つまらんのじゃぁ〜」



真っ先にカロルが
「さんせい!!!」


「おっさんも賛成〜」

「楽しそうです!」

「あら、おもしろそう」

「ま、暇だし良いんじゃねぇの?」

「ア、アタシも魔導器の修理終わったから別にやってあげてもいいけど…」

その後 次々と賛成の声が聞こえてきた。
やはり皆暇で退屈でしょうがないらしい。



「でも皆で遊ぶっつったって何すんだ?」

「むっ、考えてなかったのじゃ。」

「なにそれ…。」

「うちはユーリと一緒に居られればそれで良いのじゃ〜、の?ユーリ?」

「はいはい」

「ん〜…でもホントになにしよっか…」

「カードなどの道具もありませんしね…」


肝心の遊ぶ内容が決まっておらず何をしようか悩んでいると、


「腕相撲はどうよ?おっさん、強いわよ?
何たっておっさん腕相撲100段だからね!!」

「どっかで聞いたことのあるセリフじゃの…じゃがウチも負けんぞ!!ホオジロザメの様な一撃をお見舞いしてやるのじゃ!!」

「楽しそうですね、そうしましょうか?」

「ならアタシは審判でもやるわ」

「私は別にそれで構わないわ」

「さんせいさんせ「却下。」


皆が賛成の声をあげ腕相撲に決定しかけた時、ユーリがいつものポーカーフェイスは何処へと言った何ともいえない引きつった顔をしながら反対した。



「ええええぇぇぇどうして!??」

「どうしてもだよ」

「いつもの青年らしくないわね〜、何か隠してる?ん?」

「ユーリ、怪しいです!」

「べ、別に何もねぇよ」



ガチャ。



「ただいま…って あれ、皆揃っているんだね。」

「げっ、フレン…」

「ワンワン!」



と、そこへ騎士団の駐屯所へ行っていたフレンが帰ってきた。


「あ!フレンおかえり!」

「おかえりなさい」


「あぁ、ただいま。
それでどうしたんだい一体、外までカロルの声が聞こえたけど…」

「そうだ!聞いてよフレン!
今ね、暇だから皆で腕相撲やろうって事になったんだけど ユーリがやだーって言うんだよ!!!」

「ハッ!まさかユーリ腕に傷があって痛くて出来ないとかですか!?
大変です、今すぐ見せてください!治癒術をかけますから!」

「ちょっ、エステルちがっ、違うからっ、って人の話を聞けっての!おいフレン!笑ってないで助けろって!」

「腕相撲…、フフッ、なるほどね、ユーリのその顔も納得だ。
エステリーゼ様、ユーリは怪我なんてしていませんよ。」

「え?そうなんです?」

「分ったなら離せって。
ホントお前何でこのタイミングで帰ってくるんだよ…」

「でも助かっただろう?」

「そりゃそうだけどさ…」


カロルから事情を聞いた途端、全てを察したような笑みをこぼすフレンと それとは対照的に全てを諦めたかのような顔のユーリを見て 他のメンバー達は首をかしげる。



「フレン何で納得、なの?」

「ウチも気になるのじゃ」

「おっさんも気になる」

「私も気になるわ」

「何かバカっぽそうだけど、気にならなくはないわ」



「…だ、そうだけど。ユーリ、どうする?」

「ハァ…、もう何でもいいわ…」

「クゥーン…」


諦めたユーリはラピードの頭を撫で始める。




「じゃあユーリの了承も得たことだし話そうか、
実はね、ユーリはとても腕の力が弱いんだ。」



「「「「「「は?」」」」」」



フレンの言葉に一同が同時に同じ言葉を発し、同じ顔をし、同じ方向を向いた。

向いた先にいる人は、もちろんユーリ。


「え、今のあたしの聞き間違い、じゃないわよね?」

「あら、随分可愛い弱点。」

「え、ちょっと待って!だってユーリいっつも僕が両手で持つようなでっかい斧とかブンブン片手で振り回してるじゃん!」

「確かにそうね〜、てかそんな可愛い理由だったのね、うっひゃひゃひ



バギッ



「殴るぞおっさん」

「もう殴ってる〜……」

「おっさんは放っとくとして、でも何であんな武器は振り回せるのよ?」

「あれは遠心力とかだから 力はほぼ関係ねぇ。
ま、言ってみりゃ慣れ、だな。」


「ユーリは昔から いくら訓練しても腕の力だけは強くならなかったよね。

騎士団の入団試験の時も
俊敏性とか柔軟性とかはトップクラスだったのに筋力だけは平均以下だったし。

そういえばユーリ、懸垂10回 出来るようになったのかい?
昔『絶対ムキムキになってやる、フレンなんか目でもねぇ。』とか言って意気込んでいたけど…。」

「うるせぇこれ以上俺の傷口に塩を塗るな…どうせ2回しか出来ねぇよ…、
あれ10回も出来る奴は人間じゃねぇ。

てか黙って聞いていれば喋り過ぎだっつーの…」


「おっさん出来るわよ?」

「じゃあ少なくとも僕とフレンとレイヴンは人外だね。」

「は!?カロルも出来んのかよ!?」

「あら、私だって出来るわ、槍って結構腕の力使うもの」

「ジュディまで…、まじかよ…」



元を含む騎士団2人が出来るのはともかく、12歳の少年と、ましてや女性にまで出来ると言われユーリは心にフェイタルストライクを決められた。


「でもアンタにしちゃホント随分可愛らしいわよね、ふっ、ふっ、ふふふっ」

「もうリタ!笑っちゃダメですよ!
でも本当なんですか?そんな風には全く見えないんですけれど…」

「何なら嬢ちゃん 青年と実際に腕相撲やってみたら〜?」

「はぁ!?」

「むむっ!良い考えじゃの!ユーリのカレイの擬態のように隠れている違った一面が見えそうじゃからの!」

「カレイの擬態って…」

「ぜっっっっっっっっ、てぇ!やだ!!!!!!!」

「何でですかユーリ!是非やりましょう!」

「往生際悪いわね、早くやりなさいよ!別にもうバレたなら今更でしょ!?」

「終わったらおじ様がクレープ作ってくれるわ」

「ちょ、ジュディスちゃん!?」

「クゥン…」

フレンとラピードは哀れみの目で、他のメンバーは好奇心やら意地の悪そうな目やらでユーリを見つめてくる。




「ううぅぅぅ…」

ユーリがいじけている間にも準備は着々と整っていく。

「準備できました!さぁやりましょう、ユーリ!」

「ユーリ、もう諦めな…」

「うるせぇ…お前も原因の一環だからな、
今度の晩メシ覚えてろ。
イカ発イカ経由イカ行きのイカ尽くしのフルコースお見舞いしてやる。途中下車なんか許さねぇからな。」


「うっ…それはちょっと…」

「ぜってーやってやる。はぁ…わぁったよ。腹括るぜ。その代わりマジで1回だけだかんな。」

「分かりました、では始めましょう!」

「んじゃ私審判ね、行くわよ?

よ〜い……



ドン!」



バンッ!












「えぇ〜っと、青年?よーいどんが聞こえてなくて油断、してた?」


「わ、私そんなに力入れてないですけれど…」


「あら、どうやら話はホントだったのね、可愛い、ふふ」

「おお!これが"ぎゃっぷもえ"と言うやつじゃの?流石ウチの旦那なのじゃ!」

「ユーリの意外な弱点が…可愛い…」


メンバーが今起こった出来事にそれぞれ感想を言っていた時、




ガタッ





椅子から立ち上がり愛刀を手に取る黒い影。

そしてその影が近づいた先は、と言うと。




「え?青年?せいねーん?」




言わずもがな、レイヴン。




「ちょ、タンマタンマ青年!?!?!?
目!!!目ぇ据わってるわよ!!?!?

この世のものとは思えないくらいよ!?

いつもの可愛らしいお顔何処!?あっ。」





ブチッ


ユーリから邪のオーラが漂う。


「あ〜ぁ…レイヴン地雷踏んじゃった…」

「ちょ少年!冷静に分析してないで!?おっさんの命終わっちゃうから!!!!!!」



ユーリが邪神に進化し、怯えるレイヴンを前に下を向きながら何かを呟く。

「元はと言えば…おっさん、あんたが腕相撲やろうなんて言わなければな…こんなことにならなかったんだよな…おっさん良い言葉教えてやる、触らぬ神に祟りなし、ってな」



「え、青年、え、ま、まってマジでごめ


漸くレイヴンを見たユーリの顔は、先程とは違いとても良い笑顔だった、ユーリの背後に必殺仕事人の存在を感じさせてくれる様な。


そしてその笑顔で首を傾げ、にっこりとこう言い放った。

「腹ァ括れよ?おっさん?」



言った途端 ユーリの顔は表情が一気に消え、背後の鬼神がそのまま乗り移ったかの如くの勢いで、刀の鞘を放ち、レイヴンめがけて走り出した。



「いっやぁぁぁぁぁぁぁぁごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!」


「待てコラァおっさん!!!!!お前だけは逃がさねぇ!!!!!

おっさんの末路は幻狼斬、蒼波追蓮、円閃牙からの噛裂襲、爪竜連牙斬に天狼滅牙、仕上げで漸毅狼影陣で決まってるんだよ!!!!!!」


「それ青年のめった斬りコンボじゃないの!!!!嫌よ!!!!!!!!」



2人の声は、ダングレスト中に響き渡った。



その後、レイヴンの行方を知る者はいなかった…











(さぁ、フレン、次はお前の番だ。残さず食えよ、残したらイカで作った布団に寝かせてやる。)

(ちょっ、ユーリこれはイジメってレベルじゃっ)

(ぐちぐち言わずさっさと食え!!!!)

(うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)







フレンの行方を以下略。
ユーリのコンボは楽しいですよ、オーバーリミッツで爪竜連牙斬ループを良くやります、三半規管が強くなりそうですね。

ユーリさん、すまぬ。



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