Novel








「……あとパナシーアボトル3つね、おっちゃん。」

「毎度あり!ちょっと待ってなー」



水平線の向こうに太陽の半分以上が隠れ、
燃えるようだった空が段々と夜の濃紫と混ざり合い星が瞬く夜の始まりを告げようとしている頃、
ユーリとエステルはとある港町の露店で必要な道具を買い揃えていた。



「これで必要なモンは全部買ったか?」

「はい!暗くなる前に買い終わって良かったです」

「だな」

「はいよ、兄ちゃんと嬢ちゃん!お待ちどうさま。
それとコレ、たくさん買ってくれたオマケね」


そう言って店主から渡されたのは、
ピンクや黄色、水色などの様々な鮮やかな色を放つ金平糖が入った小袋。


「ん、サンキュなおっちゃん」

「ありがとうございます」

「またよろしくな〜」














「金平糖ねぇ、懐かしいな」

宿への帰り道、
先程もらった小袋をを目の高さまで持ち上げて揺らしながらユーリがふと呟いた。



「懐かしい?何か思い出があるんです?」

「ん、まぁちっとな。
…ってエステル。その"聞きたいです"オーラを抑えろって」

「だって気になるんです!教えてください!」

「わーったって、だから落ち着け」

と、今にも飛びかかって来そうなエステルを宥めて苦笑しながらユーリは話し始めた。




「5.6歳の頃だったかな…、
世界中を旅しているって言う紙芝居屋が下町にやって来た事があったんだよ。

そん時ゃオレもフレンも、目ぇ輝かせながらその話に聞き入ってたな、紙芝居屋なんて初めて見たし。」



まさに今のエステルみたいな顔だな、とケラケラ笑いながらユーリはエステルを茶化す。




「もうユーリ、茶化さないでください!」

頬を膨らませながら口を尖らせて拗ねるエステル。


「ははっ、悪かったって」

「それで?どんな続きなんです?」

「まぁ焦るなって」


まるで怒ったフグみたいだ、
なんてパティの様な例えを思いつき心の中でユーリは1人で笑いつつ、横目でチラリとまだ頬を膨らませていたエステルを見て少し微笑んで更に話を進めた。






「その紙芝居が『星のカケラ』って言う話でまぁざっくり説明すっと一番星のカケラを手に入れると願いが叶う、って話だったんだよ。


んで、その話を聞いた後オレ達は案の定星のカケラを見つける為に下町のあちこちを探し回ってな、兎に角色んな場所を調べた。


草むらの中から木の上、橋の下から屋根の上、ハンクス爺さんの家の中も漁ったな、
思いつく限りの場所は探したし、
星のカケラって名前だから夜になったら輝くかもーなんて発想で深夜に家を抜け出して叱られたりもした。

何日も何日もずーーーーっと馬鹿みたいにフレンと下町のヤツらと探し回ったよ。



でもそんだけ探しても結局どこにも無かった。

今考えりゃンなモン無いって分かるけど何せあの時は子供だったからな、だいぶ落ち込んだよ。


それで落胆しながら家に帰ったら机の上に小さな袋と『星のカケラ』って書いてある紙があった。
恐らくオレらを見兼ねたハンクス爺さんか女将さんが置いてくれたんだろうな。



その小袋の中身は金平糖だった、
けどあの頃は金平糖の存在も知らなかったし何よりこの色と形ですっかり星のカケラって信じ込んだんだろうな、
すっげぇ嬉しかった覚えがあるよ。

そっから先どうしたかは覚えてねぇんだけどな。」




ま、今となっちゃ金平糖なんてただの砂糖のカタマリだけどな。

と話の最後に皮肉を付け加え、
ユーリは袋から金平糖を取り出して口に放り込んだ。







「そんな素敵な昔話があったんですね…、
話してくれてありがとうございましたユーリ」

「どういたしまして」




「でも珍しいです」

「何が?」

「ユーリが自分の昔話をしてくれた事がです、ユーリはあまり自分の事を話さないから…」


と、エステルが呟いた。









「…別に誰にでも話す訳じゃねぇよ」

その呟きに小さく返事をしたユーリ。





「ユーリ、何か言いました?」

「いんや、メルヘンメーカーの卵サマにちょっとネタを提供、って思ってな。
気まぐれだよ、気まぐれ。」

「もうユーリ、だからからかわないで下さいってさっきも言ったじゃないですか!」


しかしユーリの小さな返事は当の本人には届いておらず、空へと霧散していった。



「ははっ、悪ぃ悪ぃ。
おっ、そんな事話していたらもう大分空も暗くなって来たな。」

「本当ですね、
星のカケラが降ってきそうです、ユーリ」


「もう恥ずかしいからその話は終わりにしてくれ、
他のヤツらには内緒だからな…?」

「ふふ、分かりました。
あ、宿に着きましたね。」





2人が宿に到着しユーリはドアノブに手をかけようとした時、ふと思い出したように振り返りってエステルに声を掛けた。




「エステル」

「…はい?」

「星が綺麗だな」

「…そうですね、段々お星さまも空に見えてきました。
でもそれがどうかしました?」



「分からなけりゃ良いよ」

「え?」

「何でもねぇって、ほら早く入らねえと閉め出しちまうぞ〜」

「えっ、ちょっと待ってくださいユーリ〜!!」









扉の向こうに消えていった青年の言葉の想いが彼女に届くのは、

















(お前はオレのこの想いを知らない)

(敬具、と。

星のカケラだか何だか知らねぇがさっさと届けてくれよ、この想い。)









星が綺麗ですね、の意味を知って滾った結果。
最近フォロワーさんとユリエス談義をしてユリエスが熱いです。
ユリエス、微笑ましいですよね。
見ているこっちがもどかしいユリエスが好きです。お前ら早くくっつけ!ぐらいの。
ユリ(→)←エスが良い、今回のは全く違うけど。なんかヘタレなユーリになっちったけど、まぁまぁ。

あと余談ですが、金平糖が星のカケラって言うお話は私が小さい頃母親に聞かされていたモノです、それを信じていた自分…純粋だったよあの頃は…。


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