Novel
自己紹介をさせて貰う。
自分の名はラピード、
ニンゲンに、アイボウにそう呼ばれているから、ラピード。
ニンゲンの言語は理解は出来ない、
何せ自分はニンゲンではないから。
「ニンゲン」とはこの世界の中で最も知能の高いイキモノでありニンゲンの区別によると自分達は「ケモノ」と言う部類に存在し、
その中でも「イヌ」と呼ばれるイキモノだそうだ。
もう一度言う、
自分はニンゲンの言葉は"理解は"出来ない。
理解は出来ないが言葉を"認識する"ことは出来る。
物心ついた時から周りにいたニンゲンにラピードと呼ばれていたから、
だから自分の名はラピード。
次にアイボウについて話そう。
アイボウの名はユーリ、
この認識もまた周りのニンゲンにそう呼ばれているから。
ユーリとは長い付き合いだ、
自分がまだ幼い頃にフレンーーこのニンゲンもまた自分にとって大切なアイボウだーーと一緒に自分の目の前にやって来た。
あの頃の2人はいつもいがみ合っていた、気がする。
言葉は分からないが2人の周りの雰囲気は常にピリピリと張り詰めていたから。
今ではその様な雰囲気は全く無く、
偶に自分とユーリが住んでいる所へフレンがやって来ては穏やかな時を過ごしている。
平和が一番だ。
話を戻そう。
ユーリと出会ってから少し、幼かった自分には理解の難しい事が沢山起こり、
ユーリと出会う以前にから共に過ごしていたタイチョウという人間が死に、
その後ユーリに付いて、慣れ親しんだ土地を旅立って今住んでいるこの場所にやってきた。
正直この道を選んで正解だったと思っている。
自分の父親はタイチョウを始めとする重厚そうな装備に身を固めたニンゲン達と、
彼もまた同じ様な装備を付けて他の仲間達と共に闘っていた。
その姿は昔の自分にはとっては憧れでもあり、また少し窮屈な気もしていた。
制限される動き、
思い通りに走れないもどかしさ、
阻まれる視界、
どうしてそんな動きにくい姿でいるのか、
それでは全力疾走出来ないではないか、
周りの様子が確認し辛くはないのか、
…自分は昔から何かに縛られるのが嫌いだったのかもしれない。
それはアイボウも同じだった為、
彼が重たい鉄の塊を脱ぎ捨て自由を求め旅立つ時に共に付いて行くことを決心したのだった。
彼には自由がよく似合う。
何にも縛られず、
己の道を信じて突き進む強い意志がある。
それは周りの誰より自分が一番知っているし、理解していると自負している。
何故ならその強すぎる意志の裏に見つかる事なく潜んでいる弱さも知っているから。
その弱さを知っているのは恐らく自分とフレンだけ。
暗い闇の中で静かに、何も言わず彼に抱き締められるのもそれが理由。
自分だけが知るアイボウの姿。
だから自分は彼の強さも弱さも全て受け止める、そしてまた自分も全てを預ける。
その弱さを、
己を全て見せてくれる彼にだからこそ、自分も全てを預けられるのだ。
それだけの関係が彼と自分の間にはあるから。
言葉以上のモノが確かに存在するから。
アイボウとは言葉は通じない。
言葉は通じないが心は通じる。
言語は互いに理解出来ないが伝えたい事は互いに理解出来る。
何せ彼とは長い付き合いだ、
言葉なんて野暮なモノ、自分達の間には必要ないのだ。
でももしーー出来るとなんて思ってもいないがーー、
もし自分がニンゲンの言葉を"理解"し、アイボウと会話が出来るのなら一つだけ言わせてもらいたい事がある。
犬ごはんも中々美味いぞ、と。
アイボウのハナシ
ラピ視点で話を書き始めてまず困ったのが一人称。僕ではないし、でも、俺もどうなの…と。
取り敢えず無難に 自分 で落ち着きました。ユーリ視点のラピの話も書きたい。
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