Novel





! attention !
ショタまでは行かない少年ユーリと魔王様ユーリの謎パロです。
苦手な方は今すぐ瞬迅回帰!!
















とある世界の周りを山々に囲まれ外界との接触が殆ど無い場所に、名も無き小さな村がありました。


そこの村には古くから伝わるこんな言い伝えがありました。


『村のはずれにある闇の森には世にも恐ろしい、また世にも美しい魔王が住んでいる』


闇の森、と言うのはその名の通り木々が生い茂って青空を塞ぎ、太陽の光が殆ど届かない暗い場所でした。

その暗い暗い森の奥には荘厳な雰囲気が漂う城があります。
そう、その城の主こそが村の人々から恐れられている魔王なのだと言われています。



黒の装束に身を包み
左の手首には赤い宝石が埋め込まれた金の腕輪、綺麗な長い指の先にはこれまた長くそして鋭い爪、
目を合わせた者を引き込んでしまう様な紫煙の大きな瞳を持ち、
漆黒の長髪が靡く頭のサイドからは深紅の禍々しいツノが生えています。


そのツノは人間の生き血を吸って紅く染まっているなどの様々な言い伝えがその村には残っていましたが、

実際にその姿を見たことのある者は今の村の中にはいませんでした。






言い伝えの続きによると魔王は今、深い眠りについているとの事でした。

『次に魔王が覚醒した時、この世界は闇に呑まれ、災厄が降り注ぐ。
決して森に近づくことは許されない、魔王の眠りを妨げてはいけない。』と。




村の子供たちは大人からそんな話をずっとされ続け、闇の森に近づくことを禁じられていました。




この話をどこからか聞きつけた他の国の民の噂には尾ヒレが付き、

例えば魔王は美しい女を攫う
だとか強く若い男を喰らうだとか
どれが正しく、間違っているのか分からない話が沢山出回り、他の国の者がこの村に近づく事は滅多になくなりました。



しかしその魔王の話を聞いて逆に挑もうとする愚か者も稀にいました。


季節が一巡りする間に1、2回、
村には魔王を退治し名声をあげようとする勇猛果敢な者たちが何人も何人もやって来て、森へと入って行きました。

遠くの国の王だったり、はたまた別の国の猛者だったり。





が迷い込んだら最後、
帰ってきた者はいませんでした。




村の者はこれらの事で更に怯え、
外界との関係も殆ど絶っているのでした。







ある年の木々が紅葉し始める頃の事でした。



村はこれまでに例を見ない飢饉に襲われ、
その他にも大雨での土砂崩れや川の氾濫、地震、雷など沢山の災害が村に降り注ぎました。


村長はこれらを恐れていた"魔王の目覚め"だと告げ、
村の中で話し合い、村の救世主になる人身御供を出しました。



その救世主に選ばれた名誉ある人物が、
漆黒の髪に紫煙の瞳を持ち、魔王の特徴と酷似している事から魔王の落とし子、
などと散々噂され続けていた少年でした。



その少年の名はユーリと言い、彼の母親は彼を産んですぐに亡くなってしまい、
彼の親友とその家族に支えられて村の端、
闇の森から1番近くの小さな家で1人で暮らしていました。




彼にはその親友の他にも親しい人間は何人かいましたが、如何せん災いの元、災厄の種などと疎まれる方が多かった為、
この申し出を喜んで引き受け親友たちの反対を聞かずに人身御供、言わば生贄として
森へ入り、










見事魔王の城まで辿り着きました、



めでたしめでたし。










「………、と。」



「…何その即興御伽噺、お前絵本作家か何かかよ、しかも最後の方話飛ばしすぎじゃね?」


「オレは今お前から聞いた話を分かりやすーーく纏めただけだっての」



村で意味の分からない形式ばかりな儀式を終えて森の奥に入り松明の火を頼りに暫く歩いていると、
気がついたら目の前に荘厳な城、

吃驚し見上げていたら何かに首根っこを掴まれて気を失い再び気がついたら豪華なソファの上、

目の前には鏡でもあるのかも言うほど自分とそっくりな顔が美味しそうにプリンアラモードを食べている姿があった。


頭の両サイドに真っ赤なツノを生やして。




ここが何処だか分からずに辺りを見回していると目の前の自分そっくりの人間、らしきヤツに「おい」と声をかけられた。


警戒心むき出しで声の方を向けばそいつは赤い宝石が埋め込まれた金の腕輪が付いた左腕で顔を支え、長い爪と鋭い紫煙の瞳をギラギラとさせながら余裕の笑みでここに来た経緯を話せと言う。


取り敢えずありのままの事実をまるで鏡の前で自分と会話をしているかの様な複雑な気持ちでこれまでの経緯を話せば、

コイツはまるで御伽噺かの様に話を即興で纏めて再びテーブルの上の菓子を食べ始めたのだ。
コイツ童話作家なのか、自分で言うのも何だがこの顔で。



そんなあり得ない事が次々と起こり、そして現在に至る。




「はぁ…、何でもいいや。お前が魔王なんだろ?ならほら、さっさと煮るなり食うなり何なりして村の災害止めやがれ、ついでに腹でも壊してまた眠りにつけ、出来れば永遠の方」

「はぁ?確かに俺様は魔王だけどなんで俺様がお前を食うんだよ、第一人間なんて食ったって腹も壊さねぇしそもそも甘くねぇし。」

「…は?」

「それにこの災害だって人間達が散々魔導器使ってきたツケだっての、俺様のせいじゃねぇ。」


返ってきた予想外の魔王の言葉にオレは、目を白黒させる。


「それよりお前、クレープ作れるか?」

「あ、あぁ…、てか災害はお前のせいじゃ」

「作れるのか!!んならお前、これから俺様とここに住め、それにこの魔王にそんな態度していられるヤツ中々いないし、気に入った」

「あぁ…、魔導器の使い過ぎってどう言うこ、……ってお前今なんて言っ」

「よっしゃあ!!!これで態々街まで降りてクレープ買いに行かなくてすむぜ、あれ出来立てじゃねえと美味くねぇんだよな〜。
ほら付いて来い、お前の部屋案内するから」

「ちょっ、はぁ!!??」

その細い腕のどこからこんなに力が生まれるのか。そのくらい強い力でオレは魔王に引き摺られた。

フレンも力は中々強かったがそれの比じゃない。


「お前が今承諾したんだろ?男に二言はねぇよ、な?」

「わーったから!引き摺るなっつーの!イテェよこの野郎!!」


そうオレが返事をすると魔王は満足気に頷いて、オレの腕を離した、まだジンジンする。跡残ってんじゃねえのコレ。


災害が魔王の仕業では無いと言われ狼狽していた所為でコイツへの返答を曖昧にしてしまったのが運の尽きだ。

「これからよろしくな、ユ・ウ・リ・く・ん?」

同じ顔のオレでも一瞬見惚れてしまう様な妖艶な笑み。



返事しちまったものは仕方ねぇ、腹は括る。

だがやられっぱなしなのも性に合わねぇから得意のポーカーフェイスで引きつりそうな笑みを隠しながら言ってやった。



「こちらこそよろしくな、マ・オ・ウ・サ・マ」


「随分と威勢が良いじゃねぇの、流石俺様のドッペルゲンガー」


「願い下げだ」






これがオレと魔王の出会いだった。












特技、見切り発車の尻切れトンボ。
ユリユリに飢えていただけなんです、同キャラCPのお話ください。切実。

続くかも、続けたい。

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