Novel












突然ですが質問です。





朝起きたら何故か着ていた筈の寝間着が肌蹴られて、

その上に何故か隣に住んでいる筈の恋人が気持ち良さそうにスヤスヤと眠っていたら
僕は一体どうやって理性を保てば良いですか。







「…ユーリ」








助けてください。













小鳥のさえずりが聴こえてくる爽やかな朝の筈なのにどうしてこうも心が重いのだろう、



物理的にも。






今月に入ってこれで3度目だ。


ちなみに今月と言っても今日は9日。



つまり3日に1回のペースで朝この状態である。




彼女はベランダを伝って僕の部屋に忍び込んでいるらしいが、
幼馴染だと言っても一応彼氏に昇格した自分の部屋に忍び込んで
一夜を過ごす(過ごすだけであり、何もしていない)のは如何かと思う。







いや、何かしたい訳では無くも無いけれども、まぁ一応。








と、
朝からそんな事を悶々と考えていると、上に乗っていたユーリがモゾモゾと動き始めた。







「……んん…、あさ…?」


「そう、朝」


「んーー…?ふれん…?」


「おはよう、ユーリ」


「………んーー…、はよ」






ユーリは低血圧なので朝は覚醒するまでに時間が掛かる。



見たものを引き込むアメジストの大きな瞳は瞼の裏に隠れ、

風に靡く漆黒の髪は寝癖でやや絡まっている。





いつもの彼女とは違う、
僕だけが知っているユーリ。


夜這いは困るけれどこの姿を見られるのが自分の特権だと言うことは悪く無い、寧ろ大歓迎だ。







「……また夜這い失敗した…」





んーー、と言いながら伸びをすると可愛い仕草とは対照的にとんでもない言葉がユーリの口から溢れる。



最初聞いたときは僕も驚いたけれど、

3日に1回のペースで聞き続ければ流石に慣れてしまって、寧ろ呆れのため息が出る。






因みに失敗する理由は僕の寝顔、らしい。


「お前の幸せそうな寝顔見ると眠くなるんだよ」



と、いつか言われた事がある、よく分からなかった。





「はぁ…、どうして君は夜這いなんてことをするんだい…?」





「……ジュディに聞いたら…」




僕のため息と共に出た言葉に対してユーリがボソリと呟いた。






ジュディとはユーリや僕の同級生のジュディスの愛称であり、

彼女は学校で1.2位を争う美人生徒だ。




その彼女に負けず劣らず人気のユーリは彼女ととても仲が良くて、
お互いによく相談をしているらしかった。





「聞いた…、って何を?」



「…?………ッ!!!」


ユーリの呟きに疑問が有り問い返すと、


朝日を浴びて何時もより明るい紫の大きな瞳をパチパチと瞬き、


暫くして自分の言葉を反芻し何を言ったか理解したのか、
突然顔を真っ赤にして僕の枕を投げつけてきた。




が、それを僕はヒラリと躱し窓から逃げようとするユーリの腕を掴んで自分の腕の中に収める。




この一貫のユーリの行動と先程の言葉、
そして先日ジュディスから聞いた言葉をたった今思い出して、

僕は彼女が言うより一足先にここ最近の行動の意味を把握した。



"不安にさせたらダメよ?"


それを言われたのは先日、
丁度後輩から渡り廊下で告白されたすぐ後の事だった。



勿論付き合っている人がいる、
と言って断ったしそもそもユーリと以外は付き合いたいとは思わなかったし。




ジュディスに言われた時は何のことだかよく分からなかったが、

きっとこのユーリの慌てぶりも夜這いの理由も同じだろう。





しかし慌てているユーリを見ているのが少し楽しくて敢えて知らぬ存ぜぬを貫き、

緩む頬を引き締めて、彼女を問いただすことにした。







「それで…?ジュディスに何を聞いたんだい?
答えてくれるまでこのまま離さないよ?」



「うぅ〜……」


「ほら、ユーリ」





「お前が…、お前が悪いんだ…!


運動も勉強も出来て、
しかも生徒会長なんかもやっちまってるし、品行方正、10年に1人の逸材、生徒の鑑、誰にだって優しい、そんなお前が悪い!!!!!




……オレがいるのにここ最近で何回告白されたんだよ…バカ…」





可愛い、

特に最後の消え入りそうなバカ、が可愛い。




もう変態だって何だって言われても良いくらいユーリがめちゃくちゃ可愛くて、

取り敢えずめちゃくちゃ抱き締めた。





「ふれ…っ、くるし…って!」


「もうちょっとこのまま」


「少し…、弱めろって!」


「ユーリが可愛いからムリ」


「そりゃどんな理屈だむぐ…っ」


「そりゃ大好きな彼女に嫉妬されたら誰だってこうなるに決まってる、
ならない方が可笑しいだろう?」


「しっ……っ!!?」


「違うのかい?」



そう追い詰めると顔を真っ赤してあわあわと腕の中で慌てるユーリ。



可愛い、本当に可愛い。





「でもごめんね、僕の知らない所でユーリを悩ませてた」


「………」


「許して、くれる?」


「……おまえ、ほんとズルい」


顔を膨らませてユーリがこちらを見る、あともう一押し。




「放課後クレープ食べに行こう?今日は生徒会の仕事もないから」




そう言いユーリの頭をポンポン、と撫でる。





「…ストロベリーカスタードアンドホイップクリームスペシャルのガトーショコラのせ、奢れよ…」



「うん、ありがとう」



拗ねているユーリも慌てているユーリも全部可愛いけれど、





やっぱり笑っている君が一番好きだな。
















(対策として背中に『僕はユーリのものです』って貼っておこうかな…)

(何を真剣に悩んでやがる、恥ずかしいからやめろ)

(もちろんユーリの背中にも『僕のもの』って貼ってあげるよ、お揃いだね)

(ぜってぇやらねぇからな…)











アホの子変態フレンが好きです。


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