永遠の眠りから目覚めない [2/5]
ただただ、眠かった。もうずっと眠っていたくて、もう二度と、目を覚ましたくはなかった。

幼い頃から、夜が来て、ベッドに入る時間が好きだった。温かいご飯を食べて、お風呂に入って、お母さんがみんなには内緒よって作ってくれたホットミルクを飲んでベッドへ体をすべり込ませる。枕に頭を沈め、布団を頭まで被って、そして目を固くとじる。真っ暗な闇の中、だんだん、意識が薄れていく。感触も音も何もかもがわからなくなっていって、私はようやく、ほっとするのだ。私という意識がなくなって、何か漠然としたものの中へと溶け込み消えていく。責任からも義務からも、何もかもから解放される瞬間、それは確かに至福の時だった。
辛いことは忘れよう。痛いことも、悲しいことも、全部全部。
楽しいことだけ思い出そう。きっとそれが、私が生きるための糧となる。
これもあれもそれも、全部全部。たぶん明日には夢になっているから。ただの脳が作り出した妄想の御伽噺で、ただの悪夢だから。
悪夢は消える。朝が来て、目を覚ましたらすべてがただの夢だから。ただの夢になるその日まで、ずっと眠っている。

―――誰よりも強い佳織のその力は、超能部隊みんなの希望だから!

ただ持て余すだけの強い力を利用されていただけの時間なんて、知らない。みんなの期待を一身に背負った称号なんて、いらない。大好きで大切だった人さえ守れない力なんて、もう、持っていても意味がないのだ。

志賀さんはああ言ってくれたけど。私がひとりの女の子として生きるにはもう、だいぶ、人を殺しすぎたんです。

「ゆっくりおやすみ、佳織。きっと志賀も、そちらできみのことを待っているだろう」

だからもういいんです。おやすみなさい、志賀さん。おやすみなさい、仲間だったみんな。永遠にさようなら、早乙女大尉。
私はもう、生きていくことに疲れたのです。
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