好き、大好き、愛してる。
だから部長、
俺と―――…






「ねぇ、部長?」


「なん?」


「別れましょ?」


「……え?」


白石部長は今にも泣き出しそうな顔をした。
あぁ、泣かんでくださいよ。
俺も泣きたくなりますやろ。

俺は部長にしか聞こえないような声の大きさで話しかけた。


「…俺、部長の事が好きすぎてたまに殺したくなるんすわ。誰の目にも触れさせたくない。誰にも渡したくない。これって危ないでしょ?殺人の一歩手前。だから…俺がいつか部長に手をかけてまう前に俺と別れてください」


目の前の部長は切な気な顔をした後にうつ向いてしまった。

部長、
どうか俺から逃げてくれへん?
まだ間に合いますから。

俺との仲、なかったことにできるから。
だからはよぅ、俺のこと捨てて。


「…嫌や」


一言、小さく否定の言葉を呟くと部長は顔をあげた。


「……は?」


「なして好きなのに別れなあかんの?」


「なしてって…さっき言うたやないですか。俺は部長の事が好きすぎていつか殺してしまうかもしれへんて。……まさか、冗談やと思うとるんすか?」


「……俺な、お前になら殺されてもええと思うねん」


俺は頭が真っ白になった。


「…アホですか?」


「失礼なやつやな」


なぁ、なしてなん?
なして俺から離れてくれないんすか?
 

「部長、…俺と……別れてください…」


「だから嫌やて」


「じゃあ、俺にもう、」


「なぁ、財前?」


部長は、ひどく優しい声音で俺に聞いた。


「お前、ほんまに俺と別れたいん?」


「………はい」


そんな優しく聞かないで。

しっかり決意してきたはずなのに揺らぎそうになる。
だから、言葉につまった。


「じゃあなして泣いてるん?」


「……え…?」


俺が泣く?
んなわけないでしょ。
ぽたり、
乾いた地面に一粒の水滴が落ちた。

………あれ?


「ほんまは別れたくないんやろ?」


「………」


「俺は財前から離れるつもりはあらへんよ?」
「………っ………」


もうこれ以上俺に関わらないでください。
せっかく、せっかく
部長のこと、手放せると思ったのに。


「ぶ、ちょ……ごめ、なさい……好き、大好き…」


「俺もやで」


そういうと部長は俺を抱き締めてくれた。


「部長のこと、殺しちゃって知りませんからね」


「財前に殺されるなら別にええって」


部長はそういって笑った。





俺はあなたの手を離せるほどまだ強くない。

だから、後少しだけ甘えさせてくれへん?

だけどたぶん、あなたの手を離す事は一生出来へんやろな。
こんな俺はきっと、君依存。

 
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