銀土/吸血鬼土方

(血の匂いに、酔った)


「はあ……はぁ、」

ドクドクと、俺の体から血が流れ落ちる。傷口を掴んだら、痛みが増して掴んだ手が真っ赤になった。
くらくらする。血が足りないのだ。
俺は所謂吸血鬼ってやつだ。でも完璧な吸血鬼って訳じゃない。母方が人間の、中途半端な吸血鬼だ。それゆえに普段は人間として生きていけるし、日光にだって当たれる。ニンニクも十字架も効かない。だから、俺は今まで一度も血を吸ったことはない。ただ、俺の中に流れる血が足りなくなると、吸血鬼としての本能がチラリと顔をだす。
ほら、今みたいに。

「あらら、随分と弱っちゃって」

「っ、てめ、ぇ」

歩くことが出来なくてうずくまる俺に、拳銃片手に話し掛ける男。こいつはハンターと呼ばれる吸血鬼狩りをする者だ。本来なら、理性が飛んで見境なく人を襲い殺してまわる吸血鬼のみを狩る奴らなのだが。

「俺はっ、何もしてねぇっ」

「うん、君は何もしてないよ」

「ならっ、」

なんで、と、言葉にしようとしたがそれは音にならなかった。目の前の男が俺を見下ろして笑う。今まで隠れていた月が、顔を出した。
ゾクリとした。朱い目が俺を見つめる。カチャリ、と拳銃が鳴った。

「欲しくなった」

今度はにっこり笑われ、目線を合わすためにしゃがまれる。するり、と頬を撫でられた。血が指の後を追うように俺の頬に線を引く。

「人間でもなく、吸血鬼でもない、綺麗な君が欲しくなった」

くらくらと頭に響く低音。血が、血が足りない。霞みがかかったようにボンヤリとしてくる思考。視界が銀色にぼやける。
欲しくて欲しくて堪らない。俺の中に流れる吸血鬼としての血が騒ぐ。本能と理性がぶつかり合う。
そんな俺を見て、目の前の男は笑う。

「ねぇ、早く吸っちゃえば?」

くすくす笑いながら、俺の目の前で己の血を垂らした。多分、その血を見る俺の目は吸血鬼そのものだったのかもしれない。

ぽたり、意識が一滴堕ちる。喉が上下した。

「いつまでも人間ぶってることなんて、出来やしないんだよ」

喉を通った初めての血は、甘い味がした。



「俺に囚われた時点で、お前も囚われてるんだよ」


110501

すいませ、なんか、おかしくなりました
吸血鬼萌える、血を求める土方さん萌えとか思ってたらこんなことに……
拍手して下さった方に深く感謝を申し上げます

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