猫土と銀時04

(銀と俺)


※トシ視点で進みます

その日、銀時は上機嫌だった。
朝から鼻歌を歌ったり、神楽と新八に気持ち悪いって言われても全然動じていなかった。
俺はこんな銀時を今までに一度も見たことはない。
そのうち新八も神楽も出掛けて行って、俺と銀時の二人になった。
しばらくして銀時は時計を気にしはじめた。
何回も何回も時計を見ていた。
そんなに時計が気になるのか?
とにかく、今日の銀時はいつもと違っていた。


「あのな、トシ」

「ん?」


俺は銀時に構ってもらえていなかったので、自分のしっぽで遊んでいた。
銀時は俺を抱き上げて、そのまま笑顔で言った。


「今日銀さんお出かけするんだよ」

「うん」

「だから、トシには留守番しててほしいんだ」

「え、俺は一緒に行かないのか?」

「今日はちょっとお留守番しててくれよな」


どうやら銀時は俺を連れて行ってはくれないらしい。
俺はプクゥと両頬を膨らまして、尻尾でペチぺチと銀時の腕を叩いた。
銀時は悪い悪いと謝って、俺をソファの上に戻した。
ソファの上でゴロゴロしてると、また銀時は時計を見た。
俺もつられて時計を見る。
時計の針は、11時を指していた。
ピンポーンと、誰かがチャイムを鳴らした。
とたんに銀時の顔がパァァァっと明るくなる。
なんだよ、そんなに嬉しくなるような奴が来たのかよ。
銀時はばたばたと玄関まで走っていった。
俺もトタトタと銀時の後をついていく。


「土方!会いたかったぜもう何日ぶり?」

「あーあー、うるせぇ、昨日会ったばっかじゃねぇか、あほ」

「いやいや、巡回途中にチラッとなんて会ったうちに入らねぇって」


銀時は心底楽しそうな、嬉しそうな顔をしてる。
俺はいてもたってもいられなくなって、銀時の傍まで走っていった。
ギュウっと銀時の着物の裾を握る。


「・・・・・随分と懐かれてるじゃねぇか」

「いやいや、お前んとこのちっちゃい俺も随分と懐いてねぇ?」


ヒョッコリと、土方さんの脚の間からちっちゃい銀時が顔をだした。
俺は銀時のこと好きだ、でもちっちゃい銀時のことはよく知らない。
土方さんは、俺が沖田に捨てられる前にチラッと見た。
その時土方さんは意識が無かったようだけど、沖田が教えてくれた。
確か、その隣で銀時も寝ていて、ちっちゃい銀時もいたような気がするけどそこらは曖昧な記憶しかない。


「俺達が出かける間、こいつもここで預かってくれねぇか?」

「ん?ああ、いいけど別に。言っとくけどな、トシに手ェだすんじゃねぇぞ」

「あほか、こいつがんなことするわけねーだろ。お前と違って」

「何おう!こいつだって元は俺なんですからねっ、なにするか分からないんですからねっ」


銀時は必死に土方さんに言ってるが、土方さんははいはいと受け流して、ちっちゃい銀時は無表情でこっちを見つめている。
・・・、ちっちゃい銀時はちょっと怖い。


「お前も襲われそうになったら逃げるんだぞ、いいな」

「ばーか、誰が襲うかよ。なぁ銀」

「むかつく、なんかむかつく。なにそれ、銀さんにはデレないでなんでそいつにデレんの、むかつく!」


土方さんはちっちゃい銀時の頭をなでる。
いいなー、ちっちゃい銀時、気持ちよさそう。
俺もいつも頭撫でてもらってるけど、いいなー、ちっちゃい銀時羨ましいな。
じっとちっちゃい銀時を見ていると、ちっちゃい銀時とバッチリ目が合ってしまった。
ちっちゃい銀時はさも興味なさそうに俺から視線をそらした。


「じゃあ、俺達は行ってくるから、留守番よろしくな」

「ええっ!?」


今からちっちゃい銀時と二人っきりなんて、俺は不安でいっぱいだ。
でもそんな俺を置いて銀時と土方さんは行ってしまった。


「あ、えっと……俺、とーしろ……じゃなかった。トシっていいま、す。よろしくちっちゃい銀時くん?」

「銀でいい」


勇気を振り絞って自己紹介なるものをしてみたら、ちっちゃい銀時…じゃなくて、銀はきちんと返事をしてくれた。
よかった、そんなに悪い人じゃなさそう。


「お、俺のこともトシでいいから!」

「よろしく」


相変わらず何を考えているのかわかんない目をしてるけど、ちゃんと会話をしてくれるし、俺の不安は少し減っていた。
このまま玄関でいるのもあれなので、俺は銀の手を引いて部屋の中に入る。

ふと、カサカサッという音が聞こえた。
俺の耳が反応してピクピクっと動く。
なんの音だろうと思って周りを見渡していると、銀の声が聞こえた。


「あ」

「?」


俺は銀が指をさしている方を向いた。
そこには茶色の変な奴がいた。
…………気持ち悪い。


「なに、あれ」

「あれはイニシャルGという。そしてゴキブリともいう」

「銀って物知りなんだね」


感心しながらも俺の目線はイニシャルGから離せない。
あいつはソファ付近をウロウロとしているから、俺達はその場から動けずにいる。
なんか、近づきたくない。
銀も一緒な気持ちなのか、そのまま動かないでいる。
触感みたいなのが、ピコピコ動く度に鳥肌が立つ。
俺は無意識に銀の手を強く握ってしまった。
そしたら銀も握り返してくれた。


「でも、あいつどうしよう」

「殺る」

「え、」


いつの間にか銀は両手にスリッパを持っていた。
スリッパで倒すのか?
と、またいつの間にか銀は俺の傍から離れ、イニシャルGのところに向かっていた。

じりじりと間合いをつめている銀。
両者睨み合い(?)が続いている。


「銀、大丈夫?」

「大丈夫、俺が殺る」


銀からは微かに殺気というものが感じられた。
でもさすがだな!
俺ならあんな奴に立ち向かうなんて到底できっこないと思う。


「っな!トシ、逃げ………!!」


いきなり銀が叫んだ。


「にぎゃああああああ!」


そして俺も叫んだ。
だって、今まで床にいたはずのイニシャルGが飛んでいたからだ。
しかも俺に向かって。

あいつが飛べるなんて予想外だ。
銀も慌ててこっちに走ってくる。

そのまま俺達はイニシャルGと大乱闘になった。
だがイニシャルGは思ったより強くて、結局俺達は部屋の隅で丸まって銀時達が帰って来るのを待つはめになったのだ。





イニシャルGは、土方さんが排除してくれた。
銀時は気持ち悪くて見ることもできないらしい。
土方さんは男前でかっこよかったです。

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