猫土と銀時03

(沖田そうごと俺)


「さて、これからどうしやす?トシィ」


どす黒い顔をおれに向けて、沖田そうごはそう言った。
…………、助けて銀時!






今日はいい天気なので、トシを連れて散歩に行くことにした。
トシも最近はずっと部屋の中に篭っていて、定春と遊んでいる毎日だった。
神楽は力の加減が出来ないので俺が触るのを禁止にして、新八には何故か警戒心むきだしで、近づかせてくれないでいた。
なので必然的に遊び相手は定春と俺で。

だから外に出してやった時の喜び方は尋常じゃなかった。
定春も行きたそうにしていたので、仕方なく連れて行くことにしたのだが。


「ちょっ……定春お前…ちから、つよっ」


少しの間散歩を神楽に任せっぱなしにして自分はサボっていた。
いや、飼いたいと言い出したのはあいつだから、俺はサボってなんかいない。
とにかく、何故か前よりも力が強くなっていて、リードが今にも引きちぎれそうで怖い。
トシは隣でスキップしながら歩いている。
ああ、どうかこのリードが切れませんように!


「あれ?旦那じゃねぇですか。犬の散歩たァ、大変ですねィ」

「あ、沖田君」

「ワンッ」


ブチッ
三人、正確には二人と一匹の声が重なった。
それと同時に俺の手元から嫌な音が聞こえる。


「さだはるぅぅぅぅ!!!」


リードが切れたのだ、だから嫌な音がしたのだ。
最悪なことに定春はそのまま走りだす。
隣にはトシがいて、トシを抱えて定春を追いかけようとするが、それは沖田君が言った一言でさえぎられた。


「俺がこいつ見てやすから、旦那は安心してでか犬を追いかけてくだせぇよ」

「んな!?」

「え?まじで?そんじゃあ頼むっ」

「銀!!」


トシの必死な声が聞こえるが、定春は速い、トシを抱えたまま全力疾走ははっきり言ってきつい。
それに早く捕まえるないと、また迷惑をかけてしまう。
俺は心の中でトシに謝りながら、定春を追った。







「おっと、逃げようたってそうはいきやせんぜ」

「はっ、はなせ!おれは銀時のとこに行くんだっ」


沖田に首ねっこを捕まれて、おれは動けずにいる。
こいつは嫌いだ、全部嫌いだ。
今だって、黒い笑いを浮かべておれを見ている。
絶対、何かしらしてくる気だ。
おれには分かる!


「いたいいたい!やめろコノヤロー!!」


耳をグイグイ上に引っ張られる。
必死に暴れ回ってみるが、全然効いてないみたい。
余裕の表情を浮かべておれを見下ろしている。


「今はあんたを守ってくれる旦那もいないし、やりたい放題できるぜィ」

「ヒッ!」


おれはこれから起こるだろう出来事を思い浮かべて、引き攣った笑みを浮かべた。










「旦那ァ」


まったく、いい年して全力疾走なんて………。
定春を捕まえて公園で休憩している所に沖田君がやってきた。
トシの首ねっこを掴んでブラブラと左右に緩く振っている。


「あ、沖田君」

「ぎ………ぎ、ん…とき」

「トシ!?おま、なんで泣いて!」


ヒックヒックとしゃくりあげながら、俺を潤んだ目で見つめている。
どうしたんだと駆け寄ると、沖田君を指指してまた泣きはじめた。


「ちょ、沖田君こいつに何したの!?」

「人聞き悪いこと言わねえでくださいよ。俺は何もしてませんって、暴力的なことは………、ちょっとホラー映画見に行っただけで……」

「ホラー映画ァ?」


俺が一生懸命定春を追いかけている間にこいつらは映画なんて見ていやがったのか。
って、そうじゃなくて、なぜにホラー映画?
トシはやっと沖田君から放されて、俺の足元にギューっとしがみついている。


「ほら、土方さんってホラー系統苦手じゃないですか。だからこいつも苦手かなァと思いやして」


ニヤリと笑い、トシの反応は予想以上でしたとつけ加えた。
確かに、土方は意地を張って絶対怖いなどとは言わないだろう。
だがトシは今でもまだ少し涙が頬を伝っている。
沖田君にとっては、さぞ面白かったんだなぁと、思う。


「うー、ぎん、銀時」


小さい両手をめいいっぱい伸ばして俺のほうを見てくる。
トシの小さい体を抱き上げると、そのまま抱きしめた。


「怖かったか?」

「うん」

「そうか、まぁ、もう大丈夫だから、銀さんがいるし」

「………うん」


チラリとトシの顔を覗き見ると、俺の肩に顔を埋めて少し笑っていた。


「ところで沖田君、トシとか小さい俺は何者なんだよ」


ずっと疑問に思っていた。
天人の薬がどうとか沖田君は言っていたが、詳しくは知らないのだ。


「あ?ああ、土方さんや旦那の一部でさァ」

「………は?」

「その人のどの部分が現れるかはランダムですが、土方さんなら素直な部分……ですかねこれは。旦那なら素直じゃない部分ですね、多分。まぁ、ツンツンとデレデレ同士で調度よかったんじゃねぇですか」

「…………。」


どうやらこいつらは、俺達の一部らしい。
だからトシは普段のツンデレぶりを全然発揮しないし、小さい俺は土方を前にしてもデレデレしなかったというわけだ。
ということは、土方が素直になったらこんな感じになるのか………。


「顔気持ち悪いですぜ、旦那。まぁ、根本的な所は変わってませんけどねィ」


それじゃあ、巡回途中なんでと沖田君は去って行った。
俺も、定春とトシを連れて万事屋に戻ることにしたのだ。



110301
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