銀土/風邪
(ユンケルを頂戴?)

怠い、動きたくない頭痛い吐き気がする咳がでる寒い熱い………なんて失態。




今日は久しぶりの土方の非番の日で、緊急の用事が入らない限りは二人っきりでゆっくり過ごせる予定だった。
なのに、朝起きたら頭痛動悸息切れ吐き気と俺を襲ってきた忌ま忌ましい奴ら。
布団からでるのが精一杯だったが、なんとか着替えることに成功する。
神楽と新八は、お妙のところに昨日から追い払っているので今日は帰ってこない。

土方は昼から来る予定だが、着替えに体力を大幅に使ってしまって、今はもう動けそうにない。
ソファの上に寝転んで、というより倒れ込んで天井を見る。
顔が熱い、自分の手は、額に当ててみると思ったより冷たくて気持ちよくて。
そのまま睡魔に襲われて、俺は静かにまぶたを閉じた。







「…………ん?」


俺が目が覚めるきっかけとなったのは、トントンという規則正しいリズムといい匂い。
たしかソファで寝ていたのに、いつの間にか自分の布団で寝ているし服も寝巻に変わっている。
横を見てみると、綺麗に畳んである俺の服と水の入ったペットボトル。
俺は布団からズルズルとはい出て、台所を覗いた。


「あ、起きたのか」

「土方?おま、なんで……」


台所から包丁を片手に出てきたのは土方だった。
土方は、チョイチョイと時計を指差す。
俺はのろのろとした動作で顔をあげ、時計を見てみると時計の針はゆうに12時をまわっていた。


「チャイム押しても誰も出ないわ、勝手に入ったらお前がソファの上でダウンしてるわ、マジでビビったんだからな」

「ああ………、悪い」

「ほら、今日は特別に俺が料理作ってやってるから、お前は寝てろ」

「マヨネーズはかけんなよ」

「俺だって弱ってる奴に強制はしねぇよ」


じゃあ弱ってない奴には強制するのかよ、というのは言わないでおこう。
土方は少し眉をひそめて、また台所へ戻って行った。
土方の手料理が食べられて、しかもちょっぴり普段より優しい。
風邪は引いて欲しくなかったが、今、この瞬間だけは少し感謝した。





「おい、熱測れ」

「あ、ひじかた」

「おら、自分でできるだろ。さっさと体温計を取れ」

「ういーっす」


料理ができたのか、土方は体温計を持って俺のところに来た。
俺が熱を測っている間に、土方は台所に戻って、先程作っていた料理を持ってきてくれた。
いい匂いがする。
ちらっと土方の手にある器を覗くと、中にはお粥が入っていた。


「熱、何度だ」

「んー……、7度8分みたい」

「9度ねぇんだったら大丈夫だな」

「確かにさっきよりはマシだけどさぁ、銀さんもう少しで8度に足突っ込んじゃうよ?8度ってものすごくしんどいんだよ?」

「たかが7度後半でうるせぇ野郎だな、俺は9度5分まで大丈夫だ」

「はぁ!?いや、絶対大丈夫じゃねぇだろそれ!?」


まさかとは思うが、こいつ熱があるときまで仕事してないだろうな。
ジミーや沖田君が気づいたら大丈夫だろうが、部屋にこもりっぱなしだったら、こいつは絶対無茶をする。
俺にはわかる。


「何考えてんだ、さっさと食え」

「なにそれ、もっと可愛くできないわけ?銀時あーん、とかさ」

「……………」


ちょっとふざけただけなのに、冷めた目で俺のことを見てくる土方。
あ、ちょ、やめろってそんな目で見るの、ホントやめてっ。


「お前って、頭の中はいつでも元気だよな」

「そう?」

「ほら、銀時あーん」

「むぐっ!」


ふいに開いた口の中に、先程俺が言った台詞をいいながら、お粥をつっこまれる。
台詞が棒読みだったことに少々落胆したが、口の中に広がった美味しさと同化した。


「………、口に合うか?」

「っ何これ!むちゃくちゃ美味いじゃねぇかよ!」

「そうか?」

「うん、お前って料理上手いのな!」

「昔は作ってたからな、自分で」


そういいながら、また口に運んでくれる。
ああ神様、俺はこんなかわいい嫁を持てて幸せです、まじで。


それから土方は夜までずっとそばにいてくれた。

たまには酒をのまずに、ゆっくり過ごすのもいいかもしれない。

ずっと握っていてくれた右手が、暖かかった。


110204

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