銀土 | ナノ

 これも一つの愛情表現ですが、何か?

※"なんとなく"花男パロ
金持ち×貧乏人




「おい、何やってんだ」

「……あ?」


昼飯を食べようと、誰もいないいつもの中庭に向かう。だが、その時は先客が二人いた。一人は鼻血を垂らして気を失っている様子だが、もう一人は構わず殴り続けていた。見て見ぬ振りをするのが一番いいのだろうが、俺は声をかけてしまった。あまりにも酷い様子だったから。
殴っていた奴は、眩しいくらいの銀髪に日本人ではありえない赤い瞳をしていた。不機嫌な声を上げた銀髪に睨まれて、一瞬怯む。それくらいの視線が俺を貫いたのだ。


「お前さ、俺が誰だか分かっててそういうこと言ってんの?」

「はあ?知るわけねぇだろ初対面だぞ」

「……へぇ、まだそんな口聞くんだ」


銀髪は俺の所まで歩いてくる。相当機嫌が悪いらしく、不機嫌オーラが全身から滲み出ていた。それから俺の胸倉を掴む。殴られるかと思ったが、そうではないらしい。


「俺に盾突いたこと、後悔させてやるよ」


それだけ告げて、俺を解放する。最後に一発転がっている奴を蹴ってから、銀髪は去って行った。
転がっている奴をこのまま放置するのは可哀相だと思い、医務室に運ぶため昼休みを犠牲にしたのが昨日の出来事。俺はそのことを思い出してため息をついた。


今日は後輩の山崎が昼飯を奢ってくれるというので学食を食べに来ている。俺の通っている高校は、超がつくほどの名門校だ。生徒はほとんどがどこかの企業のお嬢様やら息子やらで、金持ちばっかりだ。学力もここらの高校の中ではずば抜けて高い。この高校を卒業していれば将来も安定だ。
俺の家は貧乏で、いつも苦しい生活を強いられていた。だからこの高校に入って、将来は良い企業に入社し家族を安心させたかった。だから必死に勉強して特待生を勝ち取った。おかげで授業料から入学金から全て免除。楽しい学校ライフとはいかないが、それなりに必死に勉強している。
周りは金持ちばかり、到底気の合う奴なんていない中で山崎だけが俺の話し相手だ。あんな地味ななりでどっかの御曹司だというから驚きだ。

まだ山崎は昼飯を買いに行ったきり帰ってこない。待つのは嫌いではなかったが、早く帰って来て欲しかった。この空間で一人はきつい。
と、ざわめいていた周りがピタリと静かになった。何事かと思い周りが向いている方向を見ると、そこには昨日の銀髪が立っていた。後ろに何人か引き連れて。女子はなんだか騒ぎ始めたし、男子はなるたけ空気になろうと努力している。早く山崎帰って来いと願いながら目を閉じたら、いきなり机がガンと揺れた。


「よお、昨日ぶり」

「………」


目の前には昨日の銀髪が立っていた。どうやら俺に用があるようだ。嫌な予感しかしない。


「あ、俺用事あるんで」


この際山崎なんて放置だ放置。この場所から早く立ち去ろうと思い立ち上がったが、銀髪に腕を捕まれてかなわなかった。
銀髪は俺を見てニヤリと笑う。そこで銀髪が言った昨日の言葉を思い出した。
――俺に盾突いたこと、後悔させてやるよ
まさかこの銀髪がここまで影響を及ぼす奴だとは思っていなかった。できるなら昨日に戻りたい。

後悔している俺を無理矢理食堂の真ん中に引きずる銀髪。それから周りの奴らに向かって叫んだ。


「今日からコイツの居場所はこの学校にはねぇ。逆らった奴は、どうなるか分かってんだろうな」

「……」

「逃がさねぇよ、土方クン」


俺の人生が狂った瞬間だった。




**




次の日、教室に俺の机は無かった。ドラマでよく見る古典的なイジメだ。皆銀髪には逆らいたくないのだろう。自分が標的にされないために。廊下に放り出された机を教室に戻して座った。

山崎が昨日メールでこっそり教えてくれた銀髪の情報。名前は坂田銀時、この学校を支援しているらしく教師は誰も坂田に逆らえないらしい。この学校一番の権力者だ。俺はこんな奴に喧嘩を吹っかけたのだ。


「……馬鹿だ俺」

「あっれー土方クン、学校来てたんだ」

「……」


聞こえるはずの無い声が聞こえた。坂田銀時だ。クラスは違うはずなのに、わざわざ俺に話し掛けにくるとは相当な暇人らしい。


「何か用か」

「いや?別に」

「じゃあ自分のクラスに戻れよ」

「ッお前本当にムカつくね」

「……もういいだろ、帰れよ」


坂田は気づいているのかいないのか、教室には俺と坂田の二人しかいない。どうやら坂田がいることで他の生徒が入って来づらいらしいのだ。おかげで廊下には教室に入れない生徒達が溢れ返っている。
だが坂田の機嫌は悪くなるばかり。これは面倒臭いことになりそうだ。はぁ、とため息をついたらついに坂田がキレたらしく、俺の机をガンと蹴った。


「いい加減にしろよテメェ」

「テメェこそ、何様だコラ」

「土方テメェ……!!」


殴りかかってきた坂田にさすがの俺もいらついてくる。何だコイツは、世界は自分中心に回ってるとでも思っているのか?本当何様だよ。坂田の拳を右手で受け止めそのまま背負い投げを繰り出す。いきなりの事で上手く受け身が取れなかった坂田は背中を床に強打していた。


「はっ、自分が全てだと思うなよ」

「……ッく、」


何だか俺が悪役みたいで、そしてこれで完全に平和な学校ライフは夢のまた夢になってしまった。坂田と周りの視線が痛く俺を貫く中、なんとも言えない気持ちになった。
坂田は立ち上がると悪態をつきながら立ち去っていく。どうやら嵐は去って行ったようだ。こんなことがずっと続くかと思うと、憂鬱過ぎてため息しか出てこなかった。




**




「……」


やっと午前の授業が終わり、周りの人間の視線から逃げるように中庭に向かった。静かな時間が訪れる事を願っていたが、その願いは叶わないらしい。なぜならまた先客がいたのだ。それは坂田ではないし何か事件が起こっているわけでもなかったが、その先客には見覚えがあった。
昨日の学食の時、坂田と一緒にいた奴だ。片面に眼帯をしていて、いかにもな不良だ。今度こそ前回の教訓を生かし、見て見ぬ振りをして去ろうと思ったが声をかけられてしまった。嫌々後ろを振り向くと、眼帯がニヤニヤしながら俺を見ていた。


「銀時を教室で背負い投げしたってのは本当かァ?」

「……ああ」

「っぶ、お前最高だな!気に入ったぜ!」

「……」


気に入られても困るだけなんだが。まあ敵に回られるよりはマシかもしれない。どうも純粋に背負い投げの事を面白がってるみたいだし。あわよくば坂田の情報を聞き出したいし。


「銀時の奴、顔真っ赤にして帰って来たんだぜェ」

「へぇ、それは何よりで」

「……てかさ、土方怖くねぇの?」

「何が」

「銀時」

「別に、あんな奴ムカつくだけだし。何も知らないボンボンだろ」

「此処には金持ちしかいねぇよ」

「生憎、俺は貧乏人だ。お前らとは違う」

「………は、」


よほど意外だったのか、眼帯は目を丸くしている。確かに金持ちばっかりだが、俺みたいなのだって居てもおかしくはない、と思いたい。


「やっぱいいよお前!」

「痛い痛い」


バシバシ背中を叩かれる。その眼帯を引っ張ってやろうかと思ったが手を止められた。変わりにサッと手を差し出される。


「俺は高杉だ、以後よろしく」

「……土方」


俺の名前は知っているようだったが一応名乗る。それから高杉の手をとった。

高杉は面白がっていろんな事を教えてくれた。何でも今までで坂田に盾突く奴なんて一人もいなかったらしいから。高杉は坂田とよくつるんでいると言っていた。あと沖田と神威という奴を合わせたこの四人が、一応学校のトップらしい。何のトップかは聞かなかった。入学してから数ヶ月、知らない事だらけだ。この学校の生徒なら常識と言われたが、なるべく人との関わりを避けていた俺は情報にも疎かった。
高杉は、何かあったら連絡するといいと言ってアドレスまでくれた。なんだコイツは、いい奴なのか。よく分からないが一応俺もアドレスを教える。その笑みの向こうに、黒い本性が無いのを祈って。


「おい、高杉」

「銀時じゃねーか」


いきなり聞こえた坂田の声に、広げていた弁当を急いでしまう。高杉は何も言わなかったが、俺の弁当はここの学食に比べたら粗末な物だ。見られたら笑われて馬鹿にされるのがおち。
キッと坂田を睨みつけたら睨み返された。高杉のアドレスが書かれた紙をポケットの中に突っ込むと、俺は坂田に背を向ける。また無駄な争いは起こしたくなかったので、自分を制御できなくなる前に足早にその場を去ることにしたのだ。




**




「随分嫌われたなァ」

「うるせー」

「俺なんかアドレスゲットしたぜ」

「死ね」


高杉は笑いながら銀時を見た。銀時の視線はずっと土方を追っている。
高杉は分かっていた。銀時が土方のことを気にし始めている事くらい。そうでなければ、喧嘩は別として普段銀時が大々的に一人に敵意を向ける事などしないから。敵意を向ける事で土方から他人を遠ざけようとしたのだろう。


「不器用な奴」

「ああ?何か言ったか」

「別に」


面白くなりそうだと、高杉は土方のアドレスが書かれた紙を眺めた。





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文章荒ぶってます、殴り書きすみません

(0405)

title Thanks 無殉






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