アンダンテ | ナノ


ジャイロが部屋に戻ると、ジョニィはくたっとベッドに横たわっていた。寝ちまったか、と少し残念な気持ちになりながらベッドに腰掛け、そっと頭をなでた。柔らかなブロンドはまだ水気を帯びている。こいつちゃんと乾かしてないのに、と思ったが起こすのも忍びない。目を閉じて穏やかな寝息を立てているジョニィだが、疲労の色が濃く感じられる。一日目の今日はほぼ移動だけの時間になり、ホテルに着いてからは軽く街を見回るだけで終わったのだが、それでも不自由な体をもつジョニィにとっては疲れたのかもしれない。ゆっくり休めよ、と額にキスを落とすと、その目が緩やかに開かれていったものだから驚いた。
「わり、起こしたか」
「ううん…おかえりじゃいろ…おかあさん、なんて?」
ふわふわした口調で尋ねられる。完全に覚醒したわけではないようだ。
「気をつけて楽しんでねってよ。お前さんにもよろしくって」
つい先ほどの母親との電話を思い出す。無事着いたのか、言葉は通じているのか、食べ物はおいしいか、ジョニィは元気か、大丈夫そうか、などなど怒濤の質問攻めにあった。まったく子ども同士の旅行ではないのだからそこまで心配しないで欲しい。とはいえ実の息子のことと同じようにジョニィのことも気にかけてくれている母の気持ちが伝わってきて、ジャイロは素直に嬉しかった。どちらにも、言わないけれど。
「そっか…兄さんも、おんなじこと言ってたよ」
「ニコラスが?」
「君が部屋出てからすぐにかかってきたんだ、電話。お土産なんていいから楽しんでこいって。ジャイロにもよろしくって」
「そうか」
空港やホテル内の土産店で、これ兄さんに買っていきたいな、ばかまだ早ぇよ、と言い合ったのを思い出して笑う。ジョニィも同じく微笑んで、再び目を閉じた。足元に畳んだままだった毛布を広げてかけてやる。それから電気を消してジャイロもその毛布の中に潜り込んだ。すると身を寄せてきたジョニィが小さな声で言う。
「…ジャイロ…しないのか…?」
「…してぇのか?」
していいのか、とはあえて聞かないジャイロの背中にジョニィはそっと腕を回した。
「正直…眠いな…」
だろうな、と苦笑しながら抱きしめ返す。
「寝とけよ。明日はあっちこっち行くんだからな」
「うん…明日も、楽しみだ…」
その言葉を最後にジョニィは眠りについた。腕の中のぬくもりに愛しさと欲求が沸き上がらないわけがないが、ぐっと押し込めてジャイロも目を閉じる。明日も楽しもうな、ジョニィ。





またまた『#ジャイジョニGWeeeeek』タグに参加させてもらいました
ニコ兄を名前だけでも出せて私は満足です
150508


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