アンダンテ | ナノ

Daybreak

 君の最後の夜明けに、祈りを。



 惜しかったな。あとちょいでゴールだったってのに、まったく厄介な奴だぜあの野郎はよ。
(そうだね。ほんと最後まで嫌な奴だった。でも遺体は彼女が取り戻してくれたようだから、良かったかな)
 そうか。
(うん。それに、約束、しただろ?ワンツーフィニッシュするってさ。君より先にゴールするわけにもいかないし)
 よく言うぜ。3rdでも4thでもオレより先にゴールしたのはどこのどいつだ。
(あれは…3rdは悪かったよ。4thは、飢えなきゃ勝てないことを君にわからせるためだったから謝らないけど)
 ああそうかよ。
(そうだよ。てゆうかまだ根に持ってたんだな君)
 別に、持ってねえよ。思い出しただけだ。
(そうか。じゃあさっきの訂正する。君と一緒でなければゴールしても意味がない)
 ……。
(だからさ、ちょっと今から抜け出して、協会行こうかと思ってるんだけど)
 おいおい、今あっちらへんはお祭り状態なんだろ。夜とはいえ人目があるんじゃねえか?止めとけよ。
(止めとけ?どうしてそんなことを言うんだ。僕は、ぼくは君と、ニューヨークにたどり着きたかった)
 ……そんなのは、オレだって同じだ。
(なら、)
 だがな、オレは優勝を目的としてたんだ。オレが1位で、お前が2位でなければ意味はねえ。
(……そうか。じゃあ、大人しく寝ておこう)
 そうしとけ。あのおっさんが助けてくれたから良かったけどよ、お前重傷だったっての忘れんなよ。
(これぐらい平気だ。少し休んだら、君の国に旅立つからさ)
 お、連れてってくれんのか。
(ああ。ずっと君のあとをついてきたけど、今度は僕が連れていくから。必ず君を故郷まで送り届けるよ)
 ふ、頼もしくなったもんだな。
(だろ?だから君の方こそ、安心して眠ってくれ)
 そうすっかな。お前さんに引っ張られるのも悪くない。……頼んだぜ、ジョニィ。
(任せてくれ、ジャイロ。……おやすみ)
 おう。……おやすみ。



 お前の最初の夜明けに、祈りを。



180119

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