アンダンテ | ナノ

それは血となり肉となる

日中はそれほどでもなかったが夕方になると曇り始めた。雨こそ降ってないものの、今日は月が見えない闇夜になるだろう。早々にキャンプ地を探し、休息を取ることにした。飛ばしているだけではこのレースに勝てないのだから。
焚き火のための適当に集めてきた薪を置いて、周りを石で囲った。今夜はジョニィが夕食当番だった。ジャイロはというと簡易テントを作っている最中だ。ロープを地面に固定させながら、何てことはない調子で話しかけてきた。

「なあジョニィ、一発ギャグやらないか」
「やらない」

火をおこして水を入れた鍋をセットした。それからバッグの中から食物を取り出す。肉や野菜のくずが中途半端に余っているのでこれらを使ってスープにでもするか、と軽く決めた。

「即答かよ!何でだよ」
「こっちが何でだよなんだけど。どうしたの急に」

投げられた声を背中で受け止めながらジョニィは自分の仕事を進めた。杭を打つ音が聞こえるのでジャイロの方も手は止めないままなのだろう。

「いやふと思ったんだが、オレのギャグを理解出来るお前さんもすげーギャグが作れるんじゃあないか?って」
「そんなこと言われても、できないよ」

自炊はある程度出来てもアウトドアではさすがにしたことなかったジョニィだが、この旅ですっかり慣れた気がする。最初の頃は経験があるジャイロにあれこれ教えてもらいながら作っていた。文化の違いもあれば単純な好みの違いもあり、そのせいで口論になったことも何度もある。時間がなくてくいっぱぐれた朝もあれば、突然の天候不良で急いでかっこんだ昼もあれば、食欲が湧き起こらなかった夜もある。食事一つ、落ち着いて出来ないこの旅だが、一人塞がっていた頃よりもずっとずっとマシだった。機械的に食物を口にして流し込むのではなく、誰かと上手いも不味いも共有出来ること。それは、とても。

「…お前はあと4回だけできるわけがないと言っていい」
「…じゃあ訂正、出来ないじゃなくてやりたくない」

ぐつぐつと鍋に入ったスープが煮込んできた。いいにおいがするのでこれは成功したかもしれない。後ろからバサっとテントを張る音が耳に入ったかと思えば、作業が終わったらしいジャイロがこちらに寄ってきて、隣に座った。

「…夕食当番代わるのと、一発ギャグやるのだったらどっちがいい?」
「当番代わる」
「即答かよ!!自分のネタで世界を沸かせてみたいと思わねえのか!?」

おたまで掬ったそれを一口舐める。うん、うまい。かき混ぜながら、ジョニィはようやくジャイロの顔を見た。

「ぼくはジャイロのギャグが聞けたらそれで充分だよ」
「ジョ、ジョニィ…!」


〜HAPPY END〜


「よーしそれなら新作待ってろよ!」
「それはあとで楽しみにしてるから今は夕食食べよう。スープ出来たぞ」
「…はいよ」

手渡したカップの中身をすすりながらうめえな、と言う相棒に、だろう?と返し自分も口にした。



#ジャイジョニ版深夜の60分一本勝負 お題「食事」
170610


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