アンダンテ | ナノ

内緒の話

「ツェペリ選手にとって一番厄介な存在って誰ですか?」

記者にそう聞かれて真っ先に浮かんだのは、ポコロコやDioなんかではなく同行者のことだった。そう、同行者だ。ジョニィ・ジョースター。協力関係を結んだはずのヤツだ。なのに何故って?アイツときたら人の話は聞かないわ、いつの間にかとんでもないモン拾って知らず争奪戦に巻き込まれるわ、ワンツーフィニッシュの約束は破って先にゴールするわ、とあげればキリがない。人に教えを乞うくせによく弱音を吐く。自分の限界にぶち当たると泣き喚くくせに、諦めない意志は人一倍だ。どこまでも飢えた目が必死に食らいついて離さないアイツを振り払わないどころか好ましく思ってるんだ、オレは。困ったもんだろ?ああ、1stステージ後に誘ったときはこうなるなどとオレは思ってなかったのだ。何が起こっても捨てられないものになるなんて。まったく、厄介だ。だがそれをアイツに言う気はない。もちろん、目の前でメモを片手にオレの答えを待っている記者連中にもな。いくつかの質問には答えてやったんだからもういいだろ。

「こっちは疲れてんだよ。休ませろ!」

インタビューをお願いしてきた記者をジャイロはすげなく追い返していた。あんなのは適当に答えておけばいいのに、と思ってたらその記者はめげずにぼくの方にやってきた。まだ年若いように見える(ぼくよりは上なんだろうけど)記者は可哀相なくらい必死だ。
「ツェペリ選手って怒りっぽいんですか?ジョースター選手から見てどうですか?」
―ああ、そうかもね。カッとなってぼくを殴ってくきたことも何度もあったし。荷物の中身をちょっと見ただけで冷たい目を向けてくるし。LESSONをしてくれるっていうならもっと優しく教えてくれたっていいはずなのに、ジャイロは厳しい。だけど同じくらいに優しいことも、ぼくは知っている。優勝を目指して先を急ぐ彼は、それでもぼくが追いつくのを待ってくれている。ぼくが自ら気づき学ぶまで、根気強く付き合ってくれる。ぼくが直面した現実に泣いてしょげてそのあと立ち上がるまで、見ていてくれる。今のぼくは、知っている。あんな無茶苦茶な男をどうして今の今まで追いかけ続けているのか。だけど君たちに教える気はないよ。ジャイロにだって言わない、けどいつかこの旅が無事に終われたらそのときは、伝えられたらと思う。

「おいジョニィ、そいつらに構ってねえで行くぞ!」
「ああ、うん。…ごめんね、内緒」

オレたちの関係はオレたちだけが、ぼくたちの旅路はぼくたちだけが、知っていればそれでいいのだ。



#ジャイジョニ版深夜の60分一本勝負 お題「秘密」
170429


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