アンダンテ | ナノ

壁を全面塗り替えないと出られない部屋

(※挿絵付きなのでPC閲覧を推奨します)


「本当にやるのかジャイロ…」
「ほかに方法がないんだから仕方ねえだろ?おらとっととやるぞ!」
そう言ってジャイロはハケとバケツを手に取った。

朝起きたら突然真っ白な部屋に閉じ込められてしまっていた彼らは、当然のことながら焦った。
ここはどこで、いったい誰が何のためにこんなところに。
一つの可能性としてあげられるのはやはり敵からの攻撃、だったのだが、背中合わせで身構えどもやってはこなかった。
少し冷静になって周りを見渡すと、ジョニィが一枚の紙があることに気が付いた。

『壁を全面塗り替えないと出られない』

ただのそれしか言わない…といった感じの文面と、たくさんのペンキが入ったバケツと新品のハケと雑巾。
一面真っ白な壁とそれらを前に2人は、
「「マジかよ…」」
と呟かざるをえなかった。

一応部屋をすみずみまで調べてみるが脱出口は見当たらなかった。爪弾や鉄球をぶつけても傷一つつかないこの部屋の壁はいったいどうなってるのかもわからなかった。
ならば今はこの紙に従うしかないだろう、とジャイロは判断するに至ったわけだ。この部屋の壁は4面しかないし、さほど広くはない。さっさと終わらせて出ないととんだ時間ロスだ。
ジョニィはやや不服そうだったがバケツを自分の元へ引き寄せた。

「何色でもいいのかな、これ」
「いいんじゃねえか?ご丁寧にたくさん用意されてるしよ」
「じゃあぼくは下の方を塗るから、上の方は任せたぞジャイロ」
「おうよ。…って何で離れるんだ」
「…?君がぼくの上で塗ってたら汚れるかもしれないだろ」
「いやでもよお、こんなわけわかんねーところで離れたら危険だろ」
「それもそう…か?まあ、じゃペンキ落とさないでくれよ」
「任せろ!」

ペンキにたっぷり浸したハケを壁にぶち当てて塗る。黙って塗る。白が様々な色に染められていく…というよりは、汚れていっていると言った方が正しいかもしれない。ジョニィはやる気もなく適当に手を動かしており、ジャイロはただ塗ることに飽きてきたのか落書きを始める始末だ。

「見ろよジョニィ!クマちゃん上手く描けたぜ!」
「良かったね。画家になったら売れるんじゃない?」
「そういう道もアリかもな…」

ジャイロがクマちゃんの横に馬も描き始めた。それを見て愛馬たちはどうしているだろうかと不安になる。

「スローダンサーとヴァルキリーは無事だろうか…」
「馬たちに手ェ出してたらぶっ飛ばすしかねえな」
「爪弾連打だな」

ジョニィがそんなことを言ったからかにゅっとタスクが出てきた。いつものようにチュミチュミ鳴きながら、何を思ったのかバケツの中に潜り込む。

「あっタスク、そこで遊んじゃだめだ」
「緑色…色違いタスクだな」
「言ってる場合かー!!うわあああタスクーーッッ!!」

ずぶずぶ沈んでいくタスクを慌てて引き上げると、ペンキがあちこちに飛び散った。

「全く…何やってるんだ…」
「おい大丈夫かジョニィ」
「何とか…」

抱き上げたタスクはどうかした?とばかりに首を傾げていて、ジョニィは大きなため息をついた。手はもちろん服にもペンキがついてしまった。

「あ」
「ん?」
「ジャイロごめん…君のマントにもついてる」
「あー…まっこれも勲章としとくぜ」
「何の勲章だよ」

気にしてなさげなジャイロにジョニィは内心ホッとした。それより手を拭けよ、と寄越された雑巾を受け取る。頷いてから、べったりとついたものを拭った。さて続きをするか、とジョニィが壁と向き合うと、愉快そうな声が上から降ってきた。



「ジョニィ、ここついてる」
「えっどこだ?」
「ここ」



ちゅ、と鼻先で鳴った音は、お互い以外何もないこの部屋では妙に響き渡った、気がする。



「……っ」
「もーらいッ」
「…君…ずいぶん楽しそうじゃないか…」
「にょほほ」

ニヤリと笑った金歯はこの場にあるどんな色よりも憎らしく、眩しく見えた。




ジャイジョニは壁を全面塗り替えないと出られない部屋に閉じ込められました。
https://shindanmaker.com/689645
という診断結果を元にこさちさん(pixiv)が絵を描いてくださり、更にその絵をもとに書いた話がこちらになります。
べらぼうにかわいい絵を見せて頂いたうえに挿絵の許可もくださり本当にありがとうございましたこさちさん…!!
161230


Clap

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -