アンダンテ | ナノ

雨上がり

ジョニィは目覚ましのコーヒーの香りを思い切り味わい、ゆっくりすすり、それから息を吐き出した。
「いい香りだな…」
「まっオレ特製だからな」
同じくコーヒーを口にしながら得意げな顔をするジャイロに深く頷きながら、「ああ…紛れて助かる」とジョニィは言う。
「紛れるって何だ」
「君も気づいてるだろ?今のぼくらめちゃくちゃ臭うぞ…ブーツとか特にひどい」
昨日の夕方、にわかに降り出した雨のせいで全身濡れてしまった。服は替えがあるから良かったものの、靴ばかりはどうしようもない。ぐしょぐしょになっている感覚がジョニィにはわからなくても異臭がやばいことは感じる。ジャイロも苦い顔をして視線を落とす。このレース、地形がきつかったり、刺客にやられたりと生命の危機だってたくさんあったが、こういう些細なことも地味に気落ちするものだった。
「…洗ったり乾かしてるヒマはねえからな…」
「街に着いたらどうにかしたいな…あと、スローダンサーたちもきれいな水で洗ってあげたい」
「だな。…よし、行くぞジョニィ」
「ああ」
グチグチ言っても仕方ないので早々に切り替えるしかない。湿った草を食んでいた馬たちを呼び寄せる。水を吸って重くなったブーツの紐をしっかり結び、鐙に乗せて、
「おっ」
そのとき、雲の間から朝日が顔を出し始めた。
「今日は晴れそうだな」
「…だね」
二人で目を細めて、顔を合わせた。さあ今日も出発だ。



151211

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