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ナイトレース

「なあジャイロ、笑わないでくれよ?」
「なんだよ」

言うなりジョニィはクロスさせた腕で顔を覆って表情を伺いづらくさせた。唾液で濡れた唇が動くのをジャイロはただ見つめる。

「ぼくはこんな体になるまではけっこう女の子たちと遊んできたからセックスなんて慣れてるんだけどさ、」

彼の女性経験ならば、以前聞いた。あのときは(人のことは言えないかもしれないが)爛れてんな、ぐらいにしか思わなかったが今となっては少しイラつくものがある。というか今この場で言うことか?とその口を塞いでやろうと顔を近づけると、

「…慣れてるはずなのに、いま、君にからだを見られたり触れられたりするのがすごく恥ずかしい」

熱く甘い吐息を吹きかけられた。いや、ジョニィとしては吹きかけたつもりではなかったのだろうが、結果的にそうなり、言われた言葉もあいまってジャイロの顔に頭にこころに熱が集まる。今すぐむちゃくちゃにしてやりたい欲求と、だいじにだいじに抱きたい気持ちと、ベッドから飛び降りて馬に乗ってどこかに走り出したい衝動とがごちゃ混ぜになってジャイロを追い詰めていく。

「なあジョニィ、笑うなよ?」
「なに」
「オレはけっこう親の目かいくぐってそれなりに遊んで経験積んできたけどよォ、」

「いま、お前に対してぜんっぜん余裕がねえ」

「……ジャイロ」
「……何だよ」
ジョニィはそろりと顔から腕を離し、ジャイロを見上げる。そして一言。

「かなり大爆笑」
「うるせえ、笑うなっつったろ!」
「いいじゃん。ぼくたち、おんなじだ」

ふっと笑った顔を見てまたこみ上げてくる何かがある。
ジョニィの両頬を包んで額と額を合わせた。熱が、伝わってくる。しかし、まだだ。まだ足りない。もっと欲しい。

「…そーだな。じゃ、続き、やるぞ」
目の前の存在を食らいつくしてしまいたいという欲望を隠しもせずにギラギラした視線をぶつけてくるジャイロに、ジョニィは嬉しそうに頷いた。
「…うん」

かくして2人の夜のレースは幕を開けたのだった。



150813

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